あまりに危険な自撮りが招く最低最悪の結末 命とデジタルデータのどちらが大切ですか?

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タレントの世界と同様、特別にかわいらしい10代女子は顔写真を載せるだけで途端に「いいね」やフォロワーが増えることがある。一方、思ったほど「いいね」やフォロワーが伸びなかった子は、注目を集めるために肌の露出を増やしたり、過激な行動でほかのユーザーとの差異化を図り始めることも少なくない。それが、エクストリームセルフィーの拡大につながっているのではないだろうか。一度過激な投稿で注目を集めると、フォロワーからさらに過激さを求められるため、行動に歯止めが効かなくなるのだ。

世界中で制限されるセルフィー

危険な自撮りは世界各国で問題視されており、特に事故が多いインドやロシアでは国が対策を始めている。インドでは交通量が多い海岸沿いでさくがないなどの危険な場所を中心に「セルフィー禁止地区」を指定、警告の看板を設置している。ロシア内務省も、2015年に、危険な自撮り撮影による死傷者数を減らすためのキャンペーンを行っている。

ロシア内務省によるキャンペーン(画像:ロシア内務省)

セルフィーが禁止される例も増えている。今年、カンヌ国際映画祭では、レッドカーペットでのセルフィーが禁止された。セルフィーのために足を止めることでレッドカーペットでの進行が遅れ、映画祭の威厳を失わせるためだという。

また、年に1回イスラム暦の最後の月に行われるムスリムの聖地巡礼「ハッジ」でも、セルフィーが禁止されている。巡礼者を霊的な旅路に集中させるためだという。どちらもセルフィーが流行しすぎたための措置と言えるだろう。

問題視されることが多いセルフィーだが、当然、セルフィー自体が悪いというわけではない。海外の「Psychology of Well-Being」の記事「Promoting Positive Affect through Smartphone Photography」によると、笑顔のセルフィーを毎日撮ったグループは自信が高まったり、心が落ち着くなど、心理的にポジティブな変化があったという。セルフィーには自尊心を高めるなどのプラスの効果が期待できそうだ。危険な自撮りには手を出さず、安全にセルフィーを楽しんでいただければ幸いだ。

高橋 暁子 成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

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たかはし あきこ / Akiko Takahashi

書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。『あさイチ』 『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。公式サイトはこちら
 

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