ゲーミフィケーション×OJTの人材育成 “ハイブリッド型”グローバル人材育成のすすめ

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また、2つめのポイントとして、学習効果を高めるために、受講管理・アラート管理を徹底した運用メカニズムを構築すべきであるという点だ。本社側は、受講者のアクセス履歴や得点をモニターしたうえで、低得点者を上司にエスカレーションする、クレーム数などの業務上のKPIの変化を把握するなどの仕組みを通じ、習熟度合をチェックすることが重要だ。以下の家電量販チェーンの事例を見ると、「わかりやすく楽しいコンテンツをテコに、いかに業務習熟スピードを上げる仕組み・体制を築けるか」がポイントであることがおわかりいただけるだろう。

【事例③】ある海外の大手家電量販チェーン
 2000年代中盤に、過去最大のシステム投資により、店舗の発注・返品・修理回りの業務・システムを刷新した、グローバルに展開するある大手家電量販チェーンでは、十数万人超のさまざまな人種・年齢・バックグラウンドの店舗スタッフに、バラつきなく、早期に新業務に習熟させる必要があった。その際、単なるeラーニングの提供にとどまらず、“変革マネジメントチーム”を立ち上げ、業務理解・徹底状況に関するデータを定期的に収集させ、組織長に異常値をレポートさせた。そして、組織長から職制を通じて指導を繰り返すことで、十数万人の店舗スタッフに対する早期の業務定着化に成功したのである(下図)。

終わりに

ゲーミフィケーションは一時的な流行でも、単なる飛び道具でもない。「パーツ」として取り入れるのではなく、本稿でその一端を紹介したように、経営戦略、人材育成戦略にしっかり組み込んで活用していくことが重要だ。今、多くの企業が、グローバルにどこでもオンデマンドで研修を受講できるグローバル・ラーニング・プラットフォームの構築に乗り出している。その際、言語の壁を超える“ゲーミフィケーション”の要素を織り込むことができれば、極めてROIの高い投資となるだろう。

さらにスーパーマリオブラザーズを生んだ、日本の誇るコンテンツ産業が加われば、日本企業のグローバル人材育成にも新しい展望が広がるはずだ。「人材育成×ゲーミフィケーション」はまだ端緒に就いたばかりであるが、その秘めた可能性は計り知れず、目が離せない手法といえる。

【監修者と、著者名とプロフィール】
アクセンチュア 経営コンサルティング本部 人材・組織管理グループ シニア・プリンシパル 作佐部孝哉
1994年アクセンチュア入社。人材・組織戦略チームのリーダーとして、世界的な自動車メーカーや、消費財メーカーなど、国内外で数多くのグローバルリーダー育成の責任者を担当。近年はサービス開発責任者として、「人材アナリティクス」や、「国・企業の境界を超えたコラボレーション」といったITと人材を掛け合わせたテーマを中心に手掛ける。共著に『新興国進出のためのグローバル組織・人材マネジメント』(東洋 経済新報社)がある。
シニア・マネジャー 重本憲吾  
日系大手化粧品メーカーを経て2004年アクセンチュア入社。製造業中心に、人材・組織の活性化に向けたコンサルティングプロジェクトに従事。業務改革と意識改革を融合させた、人材パフォーマンス向上が専門。ハーバードビジネススクールPLD(Program for Leadership Development)修了。

 

アクセンチュア 経営コンサルティング本部
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