老舗シチズン「アップルと戦わない」時計戦略 スマートウォッチ開発で米フォッシルと提携

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「腕時計がもはや必需品でないことは分かっていたこと」と戸倉社長は話す。「ソフトウエアで勝つのは難しい。ならば1~2年で買い換えるウエアラブル端末ではなく、いかに人生の嗜好品として長く使用でき、愛される腕時計を作れるかで勝負していきたい」。

シチズンの戸倉社長は「時計は必需品ではなく嗜好品」という考えの下、戦略を描いている(撮影:風間仁一郎)

一方で「美しい腕時計」だけを目指すのであれば、スマートウォッチである必要はないのかもしれない。戸倉氏は、「多様な消費者に受け入れられるためには、スマートウォッチのような求められる技術は取り入れる必要がある」という。細分化されてきた消費者の好みに合わせたアプリを提供することで、腕時計を買ってもらいやすくなるとの考えだ。

フォッシルと新たな可能性を生み出せるか

今回シチズンと提携するフォッシルグループは、スマートウォッチの開発に必要なアプリケーション開発に実績がある。心拍数やアクティビティ(運動)の記録、カレンダーに入力した予定のリマインドといった機能だ。

今年創業100周年を迎えたシチズンは、ハイブリッドスマートウォッチで市場縮小の波に抗えるのか(撮影:風間仁一郎)

より多彩な腕時計を展開するためにも、シチズンにとってフォッシルの技術は必要不可欠だ。木原氏は、「すでに実用化されているヘルスデータの測定や位置情報サービスだけでなく、腕時計にどのような機能を搭載していけるか可能性を探っていきたい」と提携に期待を込める。

スマートウォッチで一度挫折したシチズンが、腕時計メーカーとしてのアイデンティティを堅持しつつ、デジタル時代を生き残れるのか。今年創業100周年を迎えた老舗メーカーとしての底力が問われている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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