日本と北朝鮮「大学生14人」の交流に見た現実 平壌に約1週間滞在した堀潤氏がリポート

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「北朝鮮から戦時賠償を求められたら政府はどう対応するのか?」という質問に対し、萩生田議員は「正論で言えば、1960年代の日韓の合意の段階ですべて韓半島の補償は終わっているわけですからそれに包含されますよ、というのが政府としての正論です。しかし、新たな友好条約を結んでいくのだとすれば、大変上から目線の発言で失礼ですが、まだまだ経済的にもよちよち歩きのあの国がわれわれの国と同じような価値観でアジアで協調するということであれば、そこに手を差し伸べていくということは当然あると思います」と語りました。

先の自民党総裁選では石破茂議員が拉致問題の解決のために平壌に連絡事務所を置き直接交渉ができる仕組みをつくるべきだと訴えました。敗れはしましたが、自民党内に直接対話の連絡メカニズムの構築が必要だという声が一定数あることがわかりました。

小泉首相が平壌を訪問して以来、15年以上緊張関係が続いてきた日本と北朝鮮。いよいよ近くて遠い国との距離が縮まる日がくるのでしょうか。

2018年9月8日に東京都内で開催された報告会「『知る』ことから始める平和交流」(写真:GARDEN Journalism)

実は、この間、民間ベースでは草の根的な交流が続けられてきました。国際NGOのJVC・日本国際ボランティアセンターなどが中心となり約20年にわたって、日本・韓国・北朝鮮・中国の子どもたちによる絵とメッセージを通した交流や、日本の大学生と平壌の大学生の交流を続けてきました。昨年、両国間の緊張が高まり学生交流は中断されましたが、JVCの職員など関係者が平壌に渡り、交流を途絶えさせないよう関係をつなぎとめてきました(※絵画交流「南北コリアと日本のともだち展」や、昨年の「日朝大学生交流会」については、こちらの記事をご覧ください)。

JVC代表理事・今井高樹さん(写真:GARDEN Journalism)

そして、今年、南北の友好ムードを受け交流が再開、8月下旬、堀も学生と共に平壌に渡りました。約1週間の滞在です。今まで一部の報道を通じて得られる限られた情報と、漠然としたイメージでしか語ることができなかった北朝鮮の「いま」を自らの目で見ることは非常に大きな経験となりました。また、日本と平壌の学生同士が拉致や核といった政治課題についてひざを突き合わせて議論したのもこの交流の見どころの1つです。

今回はJVCが記録した平壌での人々の暮らしや学生交流を伝える映像と、堀も同行した今夏の「日朝大学生交流会」について2018年9月8日に東京都内で開催された報告会「『知る』ことから始める平和交流」で話された内容をお届けします。スピーカーは、JVC代表理事・今井高樹さん、JVC広報グループマネージャー/コリア事業担当・宮西有紀さん、そして堀潤です。

スマホで撮影した2018年の平壌での人々の暮らし

今井高樹(以下、今井):今年(2018年)は、8月に合計17人で訪朝しました。北京経由で平壌には7泊8日。絵画交流と大学生交流が大きな目的でした。

昨年(2017年)は、ミサイル・核実験で軍事的緊張が高まる中、大学生交流が中止。事務局だけの訪朝となりました。しかし、今年は南北首脳会談などもあり、情勢が大きく変化し、大学生交流を再開することができました。

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