出版不況に爆伸び、レタスクラブの「神会議」 沈鬱編集部を一変させた「素人リーダー」の妙

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企画会議改革と同時に進めたのが、読者の声を企画に生かすための工夫だ。まずは忙しさのために自然消滅しかかっていた、通称「ヨネスケ調査」を復活させた。読者層と近い世代、世帯の人の家に(アポを取って)上がり込み、食卓の様子や冷蔵庫の中、押し入れの中など、あらゆる場所をバシバシ撮影する。生活の現場を観察し、企画作りのヒントを得ようという試みだ。

これとは別に、新たに「LINEレタス隊」という読者グループを組織した。普段はLINEでやり取りをしつつ、月に1度、自社で抱えるキッチンスタジオで“オフ会”を開催、部員それぞれが温めている企画・切り口に対する反応をはかる。メンバーは8人前後と、ごく少数。半年をメドに、各人に友人知人を紹介してもらい入れ替える。オフ会参加者は各月4~5人だが、あえて小規模にしているのにも意味がある。

「欲しいのは大勢の総意ではなく、少数の深い意見。人数が増えるとどうしても声の大きい人に引っ張られ、細かい気づきを得られにくくなってしまう。加えて、旦那さんとのスキンシップについて、みたいな、少人数ならではの突っ込んだ話も聞くことができる」

変化が読者のハートをつかんだ

松田体制の下、企画の決め方、作り方を激変させたレタスクラブ。その成果が冒頭のとおり、誌面にも如実に表れている。新たに打ち立てたコンセプトは、「考えない、悩まない、あなたの生活をもっと楽しく」。松田自身が「これを料理と呼んでいいのか?!」と驚くような“手抜き料理”企画がバンバン出てくるようになった。調理手順を説明するページの文字数も顕著に減った。こういった変化が読者のハートをつかみ、部数の回復に果たした役割は大きそうだ。

「一度でも『レタスクラブ』を手に取ってもらうことが最重要」と語る松田氏(撮影:梅谷秀司)

とはいえ、コンセプトや内容の変化を世間に認知してもらうには時間がかかる。実際、松田が友人、知人にレタスクラブのイメージを尋ねてみると、今でも「料理上手のための雑誌でしょ?」「マニアックなレシピが載っているんでしょ?」という反応が当たり前に返ってくるという。

そこで松田はもう1つ、レタスクラブに興味のない人にも雑誌を手にしてもらう仕掛けを作った。それは連載欄のラインナップだ。元歌のおにいさん・横山だいすけ氏、声優の増田俊樹氏の連載に、宝塚歌劇団の男役スターが次々登場する「ボンジュール宝塚」――。彼らの共通点は、どんな活動も見逃すまいとメディアをチェックし、ツイッターなどのSNSで一生懸命に情報拡散をしてくれる熱狂的ファンを抱えていることだ。

一部のページに引かれたというだけでは、立ち読みで終わってしまい、雑誌そのものの購入に至らないかもしれない。だが松田は「それでもいい」と断言する。「一度でもレタスを手に取ってもらうことが最重要。目当ての連載以外もパラパラと見てもらえれば、10人に1人、内容の変化に気づいてくれるかもしれない」。

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