グーグル、自社開発スマホ「ピクセル」の野望 10月にも日本発売、iPhoneの牙城を崩せるか

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たとえばカメラ。近年のスマホは写真の遠近を鮮明に表現するため、2つのカメラを搭載していることが多いが、ピクセルは1つだけだ。人物や物体をきれいに撮るには、背景の“ぼけ”が重要になる。

ピクセルの場合、カメラが写している風景の中で、何が近くて何が遠いかを認識するアルゴリズムが組み込まれており、どの部分をぼかせばいいかを自動で判断する。数百万枚の画像を読み込ませ、グーグルの機械学習技術によって実現した。“ぼけ”の処理はクラウド上ではなく、このカメラのために自社開発した半導体チップが行っているという。

風景の中の物体の遠近を機械学習のアルゴリズムで認識し(右側の図)、被写体の背景をぼかす(記者撮影)

会話型AI「グーグルアシスタント」に関しても、他社製のアンドロイド搭載スマホよりもいち早く新機能を搭載している。たとえば、建物や植物をカメラで写せばすぐにその名前や情報を示してくれるAR(拡張現実)機能の「グーグルレンズ」がそうだ。

また、スマホを強く握ると自動的にアシスタントが起動する機能もピクセルが初搭載だ。「われわれ自身のデバイスに最初に導入し、ユーザーに使い方や利便性を示したい」(コタリ氏)。

グーグルが挑むiPhoneの牙城

現在アメリカなどで販売されているピクセル2の価格は、5インチのディスプレーを搭載した通常版が649ドルから、6インチの大画面を搭載した「XL」が849ドルからと、ハイエンドな価格帯だ。

グーグルのハードウエア部門バイスプレジデントのスヴィア・コタリ氏。机に置かれているのが「ピクセル2」、傍らにあるのがノートPC「ピクセルブック」だ(記者撮影)

透けて見えるのが、アップルの「iPhone」への対抗である。コタリ氏は、「ピクセルはアンドロイドスマホのベストなプレミアム体験を提供する。もちろん、iPhoneなどの(プレミアムセグメントにある)他製品との競争にも勝てると考えている」と自信を見せる。

「日本は非常に重要なマーケットだ」。アンドロイド部門の製品管理バイスプレジデントを務めるサミール・サマット氏はそう語る。アンドロイドのスマホOSシェアは世界だと約85%だが、日本では約52%と低い。残りの約48%をアップルの「iOS」が握っているためだ(IDC Japan調べ)。今回報じられた日本での発売が実現すれば、アップルの牙城を攻められるとの狙いもあるだろう。

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