日光で消えたフランス人女性を知りませんか 失踪から約1カ月、ベロンさんの素顔と足取り

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ホテルのマネジャーによると、彼女は29日午前10時にホテルを出発した。パスポートとスーツケースを部屋に置いたままだった。携帯電話を持って出掛けたが、位置情報は午前中ホテル周辺で止まっている。

フランスでは、彼女が行方不明になったと聞いた家族は最悪の事態を想定した。彼女の兄弟のダミアンさんとスタニスラスさん、そして妹のシビルさんは大急ぎで荷物をまとめて、8月4日、彼らにとってはまったく未知の国である日本へやって来た。8月18日には母親のアンヌ・デゼーさんも来日した。

【9月4日8時35分追記】来日した家族について正確に表記をしました。

「秘密を持つような生活はできない」

彼らには心配する特別な理由があった。ベロンさんはてんかんの持病があるのだ。学生時代に発症してからというもの、規則正しく薬を飲まなければならない状態にあった。そのため、家族とも頻繁に連絡をとっていたのだ。

「ティフェヌはおそらく1年に1度けいれんの発作を起こす。それよりも短い発作を頻繁に起こすようにもなっている。ただ彼女は危機的な状況のとき、反射的に身を守り、自分の体を傷つけないようにしている」と、ダミアンさんは話す。

「彼女は病気のせいで、秘密を持つような生活はできない」と、ベロンさんの母、アンヌ・デゼーさんは語る。「彼女が思いつきで失踪したなんて想像できない」とシビルさんも話す。

警察はベロンさんの失踪の話を聞いてすぐに動き始めた。日光の森林はあまりに広大なので、どこを捜索するか選択しなければならなかった。そこで、まずベロンさんが訪れる予定だった場所の周辺地域を2キロにわたり、くまなく捜索した。ベロンさんにはトレッキングの趣味はない。それに、自然ではなく、どちらかといえば文化に興味があって日本を訪れたため、道を外れて歩くことはないだろうと考えられる。

さらに警察は、日光の社寺周辺の41台のカメラのデータで何千時間もの記録を確認。近隣住民への聞き取り調査も数回行った。宅配業者や郵便局員など、その地域で頻繁に業務を行う会社の従業員にも取り調べを行った。住民の間でも相互に確認を取り合った。しかし、何の手掛かりも得られなかった。

次ページ地元の人々がベロン一家に見せた心配り
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