三菱自動車"完全独り立ち"に向け残る懸念 2100億円の公募増資で優先株を処理するものの・・・・

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優先株の処理が終わっても、御三家が34%以上の議決権を維持する形での「支援」は続く。「一般株主にとっては3社の支援があったほうが信用補完になるし安心してもらえるのではないかと考えている。次の中計期間は少なくとも残ってもらうが、その後のことはこれから考えていく」(益子社長)。支援の継続は「サポートしていただきたいと当社から強くお願いした」(市川副社長)という。

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販売中の電気自動車「アイミーブ」

今後を占ううえで、注目が集まった次期中期経営計画では、ほかの国内自動車メーカーに比べて開発リソースが限られる中、SUV(多目的スポーツ車)や新興国向けのピックアップトラックに集中していく姿勢を示した。

三菱自動車にとって最大の市場であるタイやインドネシアのほか、トヨタに次ぐシェアを持つフィリピンにも照準を合わせ、東南アジアなどを牽引役に2017年3月期には小売り販売台数を143万台(今期計画は111万台1000台)まで伸ばす計画だ。

また、電気自動車(EV)で培った電動化技術を生かしたプラグインハイブリッド車の車種拡大ももくろむ。5日には日産・ルノー連合との提携も発表。日産との軽自動車の企画・開発合弁会社「NMKV」の強化や、EV開発における協業、ルノーから三菱自へのセダンのOEM供給といったプロジェクトの検討に入る。

事業環境は厳しい

ただ、足元では懸念がくすぶっている。今2014年3月期の当期純利益は過去最高となる見込みだが、コスト削減と円安の追い風による効果が大きく、通期の販売台数は期初計画の116万9000台から111万1000台に引き下げている。主力市場のタイで、政府による新車購入優遇措置が昨年末に終了した影響があるとはいえ、先行きは楽観できない。

期待のEVについても、普及型を手掛けているのは三菱自動車と日産のみ。EVに詳しい三菱自動車OBは「EVビジネスは台数が重要。複数メーカーの協業のほうがサプライヤーを説得でき、採算も良くなるだろう」と話す。一方で、「EVだ、SUVだ、次世代エンジン開発だ、となると、三菱自動車は人的、財務的リソースが足りないのでは」とも指摘する。

「無理に規模や台数を追わず、三菱らしいクルマを作っていきたい」と益子社長は言う。業界内では、規模が小さく単独での生き残りは難しいとささやかれる中、三菱グループの支援に頼らない、独り立ちへの道筋をつけられるだろうか。

(撮影:今井康一)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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