「チョコモナカ」のパリパリ追求がスゴすぎる 品質改善続け、販売数は17年連続で過去最高

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パリパリッ!感を追求する徹底した取り組みは、工場から出荷された後もなお続く。森永製菓で冷菓のマーケティングを担当する村田あづさ氏は、「自社在庫は年間を通して5日分しか持たない。この在庫管理がこれまでの売り上げ増とパリパリッ!を支えてきた」と説明する。

通常のアイス類は、常時冷凍されているので品質の劣化が少なく、賞味期限を設定する必要がない。そのため、需要が落ちる冬場から作りだめを始め、最需要期の夏場に向けて数週間から数カ月分の在庫を抱えている場合が多い。

チョコモナカジャンボの場合、賞味期限が設定されていないのはほかのアイスと同じだが、夏場のピーク時にも作りだめをしない。自社の倉庫から5日以内には卸業者に納入される。こうした「鮮度管理という発想自体は他社も含めて、ほかのアイス製品にはないこと」(村田氏)だ。

飽くなき「パリパリッ!」感追求の努力

在庫管理の取り組みが始まったのは2001年にまでさかのぼる。チョコモナカジャンボの積極的な拡販戦略が始められたのだ。そこで差別化の要素として打ち出されたのが、モナカのパリパリッ!感だった。

内側がチョコでコーティングされていても、製造から日数が経てばモナカはアイスの水分を吸って軟らかくなってしまう。パリパリッ!の状態を保とうとすれば、製造してから小売店の店頭に並ぶまでのリードタイムを短縮する必要がある。

卸業者にも在庫をなるべく持たないように異例の要請をしているというが、確実にリードタイムを短縮できるのは自社在庫を持っている間のみ。そのため、在庫量を徹底的に削減することになった。在庫が4日を切ると品切れのおそれが出てくるので5日が限界だという。6日分に近づくと、製造ラインを止めて生産調整を行っている。

モナカ皮もよりパリパリッ!感が出るように見直しをかけている(記者撮影)

パッケージに「パリパリ!」(当初)という文言を加えたのも2003年頃のこと。その際には森永製菓社内で文言を入れるか入れないかで議論も起こったという。「文言をいれれば、食べた方から『パリパリしていない』というクレームが来るかもしれない」。

小さいことのようにも思えるが、パリパリ感の訴求は、森永製菓にとっての一大事だったようだ。実際にパッケージ刷新後にはそういったクレームもあったようだが、現在ではパリパリッ!に落ち着き、視覚的に訴える効果も出ている。

最低限の在庫しか持たないようにするためには、緻密な需要予測が欠かせない。アイスの需要に大きくかかわるのは気温だ。これまでは「会社のパソコンで毎日ヤフーの天気予報をみて、経験と勘で地道に」(冷菓営業部の新谷秀夫氏)やっていたが、予測の精度を上げるため、2017年夏からは日本気象協会との提携を開始した。

森永製菓が保有しているこれまでの販売データを気象協会が分析し、過去の気温の動きとジャンボの販売動向から、需要予測を立ててもらっている。現在は、気象協会のAIを用いたシステムによって月単位、週単位の地域ごとの予測がわかるようになった。それを基に生産計画を立てている。

ただ、始めたばかりの取り組みのため「まだ、精度はいまひとつ」(新谷氏)だという。気象協会が強いデータは1日の平均気温だが、アイスの販売動向に影響するのは最高気温だからだ。現在はまだ人の手で修正しているが、将来的には「人間の予測からAIでの予測に変わっていく可能性は十分ある」(新谷氏)。

今年も酷暑と台風に見舞われ、荒れ模様の夏商戦。パリパリッ!感を維持したまま乗り越えられるか。森永製菓の暑い夏が続きそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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