「フランス料理に日本酒」が増えている理由 ワインが苦手な「料理の7要素」とは?

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Kura Masterの審査風景(写真:Kura Master)

審査員全員が日本酒を飲み慣れていないフランス人。そして合わせるのはフランス料理。このため、Kura Masterは一般的な日本酒品評会とは異なるやり方でテイスティングを行う。輸出が前提となるため火入れを行わない生酒は扱わないこととし、アルコール添加は行わない純米酒のみ(精米度合いによるクラス分けはある)のコンクールとすることにした。

そして、(これが大きなポイントなのだが)ソムリエ同士が“共通の言葉”で会話できるよう、ワインにはない穀物や野菜に似た香りや味、相性などについて、ソムリエでもあり、日本酒の輸入業者でもある宮川氏が“教科書”を作ったのだ。

もし、この教科書がなかったら……ワインの常識のみでしか評価できない、何も言葉として共通認識を持たない状態でコンクールが開かれていたならば、日本酒とフランス料理、あるいは日本食以外の世界中の料理とのマリアージュに関して、イマジネーションが湧くまで時間がかかったかもしれない。

この教科書では、冒頭でも紹介したワインが苦手とする要素……それはすなわち、ワインテイスティングでは評価基準がなかった7つの要素について、料理と酒の関係性を整理。表現するための言葉、共通認識の構築を目指した。

情報交換の基礎となるべき“共通の言語”を持ったことで、審査員たちはそれぞれ自分たちの言葉で日本酒を表現し、そこに新たな表現、感覚を加えながらコメントの幅を広げていった。Kura Masterに参加を望む関係者が急増している背景には、こうしたフランス人の専門家同士が情報交換できる“共通言語”を生み出せたからという側面も大きい。

試飲はお猪口ではなくワイングラス

テイスティングの手法に関しても、フランス人の目線に合わせた。試飲は蛇の目ではなくリースリンググラスを用い、提供温度は5度。グラスの中で日本酒を回し、香りを開かせてから味わう。なぜなら、ワインのテイスティングはそのようにして味わうからだ。1点だけ、ワインよりも日本酒のほうが香りが開きにくいため「13回」と指定して“たくさん回させて”飲むようアドバイスしているという。

このようにワイングラスを用い、味そのものだけではなく、そこから生まれる香りのふくよかさ、華やかさを感じながらのコンクールとなるため、必然的にフローラルな香り高い、そしてアルコール感を感じさせず舌触りの柔らかい酒が選ばれやすい。

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