ニトリの物流戦略はここまで徹底している 本業を支える分社化で独自の発展を遂げた

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「手ぶらdeショッピング」は、今後、都心エリアに出店するニトリ店舗でも展開していく計画です。

ホームロジスティクスでは、ロボットの積極的な導入により、物流倉庫内の作業の効率化、労働環境の改善を進めています。

2016年2月、ネット通販商品の出荷を担当する通販発送センターにロボット倉庫「AutoStore(オートストア)」を導入しました。ジャングルジムのように組み上げられたグリッドの1マスごとに、ビンと呼ばれるケースをすき間なく積み重ね、その屋根面を60台のロボットが縦横無尽に動き回る様は、近未来SF映画の1シーンを見ているようです。商品の入ったケースを引き上げたり、ケースに収納したりを繰り返しながら、動きの早い商品を上段に集め、効率のよい商品の取り出しができるよう積み重ねていきます。

オートストアの効果はすぐに数字となって表れました。導入後約1カ月時点で出荷効率が3.75倍改善。その後、さらに改善が進み、最近では当初の約5倍の効率化につながっているそうです。

このオートストアの導入効果は出荷効率の改善だけにとどまりません。同じ姿勢のまま、手元を少し動かすだけで、ピッキング作業ができるようにシステム化されており、体力にあまり自信のない女性や高齢の方でも、長期にわたって無理なくピッキング作業を続けられるようになりました。

オートストアへの投資は、当初、5年程度での回収を見込んでいましたが、想定より早い投資回収のメドが立ったようです。

物流プラットフォームとしての新展開

ホームロジスティクスは、ニトリの物流を主に担う会社です。しかしニトリの規模が拡大するにつれ、物流量も増え、ホームファニシングのような小物から届け先での設置作業が必要になる大型家具まで、効率的に届けるノウハウも十分に蓄積されてきました。今やホームロジスティクスは、一般の物流専門会社にも負けないような物流プラットフォームに進化しています。

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そこで新たな展開としてスタートしているのが、外販事業です。契約企業に物流システムを公開し、ホームロジスティクスの物流網を有効活用することにより、契約企業の物流コスト圧縮を目的として展開するものです。

家具やインテリアの業界でもEC化は進んできていますが、ネット専業も含めどの会社も購入者の自宅への配送にそろって頭を悩ませています。特に家具などの大型商品は、作業員が屋内での設置までを行うことから、車や人員の手配など非効率な部分が多く、「ECで頼んだのはいいが、その後のサービスが悪くて後悔した」という声を聞くことも少なくありません。そうした利用客のニーズに応えられるのが、同社の外販事業です。

ニトリはネット消費の進展に対応するため、都心型小型店を出店し、物流を絡ませたオムニチャネルに果敢に挑戦しています。他業種の小売りチェーンにとっても、モデルになる取り組みになりそうです。

角井 亮一 イー・ロジット取締役会長兼チーフコンサルタント

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かくい りょういち / Ryoichi Kakui

1968年生まれ。上智大学経済学部経済学科を、3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学マーケティング専攻でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社。2000年に通販専門物流代行会社である当社を設立、代表取締役就任。著書に「物流革命2020」(日本経済新聞社)「日経文庫 物流がわかる<第2版>」「すごい物流戦略」(PHP新書)など

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