JR東日本「えきねっと」はなぜ使いにくいのか 巨大な座席予約システム自体にも課題がある

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トラフィックブレインの太田恒平社長(筆者撮影)

そもそも、きっぷの仕組み自体が複雑である。国鉄時代から往復割引や乗継割引、都区内や特定市内といったさまざまな制度が存在するのに加え、ネット販売によりJR各社で販売価格やサービス、システムが変わり、より複雑化が進んでいる。きっぷの制度や予約システムの使い方を熟知していないと、利用目的に合ったきっぷの買い方がわかりにくいのだ。

たとえば、新幹線と在来線特急を乗り継ぐ場合だ。乗継割引(一定の条件下で新幹線と在来線特急を乗り継ぐと在来線特急料金・指定席料金が半額になる)を使うのと、新幹線を「えきねっと」限定の割引きっぷ「えきねっとトクだ値」で購入し、在来線特急のきっぷを別に買うのとどちらが安いのか、一般にはなかなかわからない(たいていは後者のほうが高い)。

情報の一覧性に課題

「えきねっと」自体については、「多くの人がログイン画面で戸惑う」と太田さんは言う。予約などを行う際に必要なIDを入力するログイン画面には、「えきねっとユーザーID」と「My JR-EAST ID」の2種類のID入力欄があり、使用頻度が低ければどちらのIDで登録したか忘れている人もいる。また、日頃使っているのとは別の端末でアクセスすると今度は認証に手間取り、パソコンやスマートフォンを買い替えた際には混乱することが多い。

また、太田さんは「欲しい情報が一覧できない」という欠点があるとも指摘する。たとえば「乗換・運賃案内」の画面では、出発地と目的地を入力すれば利用できるルートと列車が表示されるが、その画面上で直接、表示された列車の予約や空席の確認をすることはできない。利用者が操作している段階で、その次にどのような表示が求められるかといった「先読みをしないインターフェイスになっている」ということだ。

使い勝手という点でも、「えきねっと」で予約したきっぷは、原則としてJR東日本・JR北海道の駅と、JR西日本の北陸新幹線エリアの一部駅でしか受け取ることができないという問題がある。たとえば東海道新幹線のきっぷを予約した場合、東京近郊のJR東日本の駅で往復分を受け取ることは可能だが、もし復路のきっぷを新大阪や広島で受け取ろうとしたらできないことになる。

システムの利便性にも課題がある。深夜はメンテナンスを行っているため、毎日 23時40分~0時20分、1時40分~5時30分の間はきっぷの申し込みや変更などができない。JR東日本に問い合わせたところ、これは「『えきねっと』の運営において欠かすことのできない作業」という。

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