20~30代が負う「日本型先送り」の甚大なツケ 人口構成を見れば火を見るよりも明らかだ

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このうち社会保障制度は国民が相互に支え合うシステムであるため人口構成の変化はその制度変革に、安全保障制度は国と国との関係に依存するため国際社会における日本のポジションの変化はその制度変革に直結する、と言ってもいいでしょう。そのため私たちは将来を考えるうえで、国内の人口構成の変化と、国際社会における日本のポジションの変化を把握していく必要があります。

わが国の人口ピラミッドから見えること

まず人口構成の問題についてわが国の人口ピラミッドの変遷を見ながら考えてみましょう。ここから3つのことが見て取れます。

(出所)『逃げられない世代――日本型「先送り」システムの限界』(新潮新書)

1つ目は日本の人口構造の特異性です。日本の人口構造は「団塊の世代(1947~49年生まれ)」と「団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)」の2つの世代をピークとする「ふたこぶラクダ」の構造になっています。

2つ目は平均寿命が伸びていることです。1990年に75.92歳であった男性の平均寿命は2013年には80.21歳にまで伸び、2060年には、84.19歳にまで伸びることが予測されています。

3つ目は日本全体の人口が減少に転じ、将来的に人口ピラミッドが徐々に逆転していき65歳以上の高齢者がピークになっていくことです。日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少を始めており、2028年ごろまでは緩やかに減少し1億2000万人台を維持し、その後急速に減少していくことが予測されていますが、その過程で団塊ジュニアを唯一の頂点とする逆ピラミッド型の人口構造になると見込まれています。

基本的には社会保障制度というのは20歳から65歳の現役労働者層が納めた税金・社会保険料で、児童や高齢者の福祉を賄う制度です。したがって1990年時点の高齢者は仮に選挙での投票行動を通して年金や医療といった社会保障制度に関する問題を政治的に「先送り」させても、圧倒的に層が厚い「団塊の世代」を中心とする次世代労働力が問題を吸収して解決してくれることを期待できる世代でした。

これは社会保障分野に限らず高度成長期に日本の先送り型の政治組織が有効に機能した大きな理由の1つでしょう。

次ページ「団塊ジュニア」世代に「先送り」された問題
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