茨城県が5年連続「魅力度全国最下位」の理由 農業全国2位、世界有数の科学技術もあるのに

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そうはいっても、北関東3県が観光地として認知度が低いのは、自治体も県民も全国の人々に対して自らの県を積極的にアピールしてこなかったという事実があります。

北関東3県は神奈川・埼玉・千葉よりも「リッチ」

実は、北関東3県の経済的な共通点として挙げられるのは、農業や工業が栄えていて、県民の生活水準が高いということです。直近の2014年の1人当たりの県民所得(個人所得・企業所得も含む経済全体の所得水準)では、栃木県が全国で4位、群馬県が10位、茨城県が11位であり、神奈川県、埼玉県、千葉県といった南関東3県よりも実は高いのです。

さらには、北関東のほうが南関東よりも全般的に物価は安いので、所得の差以上に北関東の人々の生活は豊かであるはずです。豊かな県は他の地域から観光客を呼び込む必然性をあまり感じていないので、熱心に情報を発信することもしないというわけです。

それにしても、ブランド総合研究所の地域ブランド調査では78項目も調査をしているにもかかわらず、どうして「魅力度」だけがメディアで大体的に取り上げられるのでしょうか。

それは、ブランド総合研究所がメディアに公開しているのは「魅力度」だけであり、その他の項目は有償で販売するというビジネスモデルを取っているからです。メディアが自らで問題意識を持って情報を発掘する力が弱まっているなかで、外部からもたらされる耳目を集めやすい情報を集中的に流す傾向が強まっている状況において、「魅力度という定義を特に考えずに、魅力度という言葉だけで順位付けする」というブランド総合研究所の打ち出し方がうまかったのでしょう。

魅力度の調査の特徴としては、「とても魅力的」「やや魅力的」「どちらでもない」「あまり魅力的でない」「全く魅力的でない」の5段階評価です。点数付けは「とても魅力的」が100点、「やや魅力的」が50点で「どちらでもない」以下の3評価はすべて0点で扱っているということがあります。こういう評価の仕方が正しいかどうかは別にして、これでは平均的な県や強いイメージがない県は加点されないという状況にならざるをえません。とりわけ茨城県の場合は「どちらでもない」が多い傾向にあり、回答の5割以上を占めているのです。

魅力度ランキングという、定義が定まっていない言葉が独り歩きすると、自治体がこのランキングを上げようとして、本末転倒な政策を行ってしまう可能性が現実に高まっているように思われます。昨今の知事選などでは「魅力度ランキングを上げる」という公約を掲げる候補も散見されますが、それだけが目的化してしまうと、すべてが平均的な県はダメだという議論、あるいは何か有名なものが2、3あればいいというような話になりかねないわけです。魅力度のランキングだけを上げようとすれば、それこそおかしな話になってしまうこともありうるのです。

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