加熱式たばこ「日本だけで大流行」という真実 「ガラパゴス市場」なのか「テスト市場」なのか

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実際、上述のように世界展開は早くも始まっている。JTは昨年、日本同様の規制があり電子たばこ市場のなかったスイスに、プルーム・テックを投入。PMIもアイコスを既に25カ国以上で販売し、電子たばこユーザーが増えつつあった韓国でも昨年発売している。

シェア争いのカギはシニア層へのアプローチか

まだ「戦国時代」の終わっていない日本ではどうなのか。「加熱式たばこは紙巻きたばこほど味やブランドに対するロイヤルティがなく、電子デバイスである以上壊れやすいため、ブランドスイッチが起こりやすい。シェアの奪い合いはこれから激しくなるだろう」と、野村證券の藤原氏は言う。「いまはアイコスが1位だが、誰しもが1位になれる市場だ」

今後のシェア争いのカギを握るのは、シニア層かもしれない。藤原氏によれば、喫煙者の40%強を50代が占めているが「彼らはなかなか加熱式たばこへと移らない。でも今後は、(JTの紙巻きたばこ愛煙者が多いこの層へのアプローチで)JTが強さを発揮するのではないかと見ている」。

シニア層へのアプローチでは、操作性という意味でもJTに分がありそうだ。デバイスを掃除する手間が要らない、待ち時間なくすぐに吸える、高温にならずそのままポケットにも入れられるなど、加熱式たばこ3製品の中で、最もシンプルで使いやすいのがプルーム・テックとされる。

JTは4月、アイコスやグローと同様の「高温加熱方式」の新製品(プルーム・テックは独自の「低温加熱方式」を採用している)と、プルーム・テックの進化版となる新製品の2種を早ければ年内に発売することを発表した。日本の加熱式たばこ戦争はますます激しさを増しそうだ。将来ここで覇権を握った者が、世界の新型たばこ市場を制すると言ったら言い過ぎだろうか。

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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