東電・東芝の「ALPS」は、役に立たない 東工大・冨安名誉教授に汚染水処理の対案を聞く
福島第一原子力発電所の廃炉作業にとって、最大の難関が30万トン以上にものぼる汚染水処理だ。今年に入り、地下貯水槽やタンク底部からの汚染水の漏えい、堰からの流出事故が相次ぎ、汚染水の一部は海にも流れ出たとみられている。
相次ぐ事故や増える一方の汚染水への対策として、政府と東電は多核種除去設備「ALPS」の増設や凍土壁建設を打ち出した。だが、切り札であるALPSによる汚染水処理に異議を唱える学者がいる。東京工業大学名誉教授の冨安博氏(現・大和エネルギー研究所技術総括)がその人だ。核燃料再処理など原子力化学の専門家である冨安氏に東電が進める汚染水処理の問題点について聞いた。
汚染水とは、ストロンチウム90問題にほぼ等しい
――かつて東工大で原子炉工学研究所教授を務めた冨安さんは、東京電力が導入したALPSによる汚染水処理に疑問を投げかけています。
福島第一原発の汚染水の実態は、ストロンチウム90による汚染にほぼ等しい。東電の公表資料によれば、処理対象水(RO濃縮塩水)に含まれるストロンチウム90の濃度は1600万ベクレル/リットルに達している。ほかの核種は十数ベクレルからせいぜい数万ベクレル/リットル程度。こうした事実から見ても、人体への毒性が強い放射性ストロンチウムのリスクをいかに減らせるかがポイントとなる。
東電は現状の技術では除去が困難なトリチウムを除く62の放射性核種を、ALPSを用いて規制値以下に減らすとしているが、本当の狙いは処理後の水を海洋投棄することにあると思われる。しかし、現在の年間規制値の10倍にも達する大量のトリチウムが含まれているALPS処理済み水を海に捨てることは事実上不可能だ。トリチウムの生物学的毒性についてはさまざまな見解があるものの、無害ということはない。
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