「選手の話が事実」とは言わない日大の冷酷さ この会見で大塚学長は何をしたかったのか

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先に「目は口程に物を言う」主旨のことに触れましたが、23日の内田前監督と井上前コーチの表情に、まず愕然としました。事件が再発しないよう真実を明らかにするという姿勢がみじんも感じられないものでした。会見のための会見と、「言った、言わない」問題に持ち込む作戦が、ありありでした。

内田前監督は日大の常務理事。報道によると、理事の不祥事や法令違反が確認されれば、日大は年額80億円を超す私学助成が不交付になるか減額されることになります(日経新聞・5月24日社説)。日大アメフト部の今後も考えれば恥も外聞も捨て、「信じてもらえないと思うが」を連発して学生に責任をなすりつけることなど、彼らにはたやすいことと見受けました。

無能力極まる会見

「言っていない(すべて選手の誤解)」、(選手がコーチから言わされて監督に言った「相手のクオーターバックをつぶすから使ってください」は)「聞こえていなかった」、「反則プレーは見ていなかった」などの無能力極まる会見は、それらのリスクを回避し、日大の信用そのものを「守るため」に取った作戦にしか聞こえませんでした。

アメフトを知らない私でも、「1プレー目でつぶしてこい」「やらなければ意味がない」「相手のクオーターバックがケガをして出場できなければこっちの得」等が、危険なタックルで損傷させること以外の意味を持つことなど考えられません。この会見で井上前コーチは明確に、「選手はうそをついていない」と言っています。そう言いながら一貫して危険タックルが選手の「理解違いによる選手1人の責任」になすり付けているのは、監督を守るために言わされているような苦しい表情でした。

同じく24日のNHKの「クローズアップ現代」で放送された、監督に嫌われたコーチがある日突然いなくなったりするので、家族を養うためには監督に逆らえないコーチもいるという現場からの証言が、それを裏付けています。

この2人の会見を見て、私は怒りより嫌悪感を覚えました。花形スポーツで昨年大学日本一になった、注目を浴びるクラブの指導者の言葉として考えられないものです。ますます加害選手の勇気が浮かばれないと思いました。正常な判断を失くすほどパワハラで追い詰められ、大好きだったアメフトが好きでなくなり、続ける権利もないと心情を吐露した彼1人が責任を負うハメになりそうで、彼の姿が息子に重なり、胸が張り裂けるようでした。

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