就活「フライング選考」、経団連の呆れる実態 会長の出身企業すら「指針」を守っていない

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この状況を「指針を守っている」と言えるでしょうか。さまざまなとらえ方があるとは思いますが、個人的には、はっきり言って「守っていない」、ひかえめに言っても「指針を骨抜きにしている」と言えると思います。

露骨な「本音と建前」は信頼を損なう

次に、経団連会長・副会長企業が上記のような採用選考活動を行っていることによる影響について考えてみます。

社会からの「信頼」を失う

「採用選考に関する指針」には、「公平・公正な採用の徹底」が謳われています。遵守を呼びかける立場にある企業自らが「指針」を守っていないのは、採用選考において公平・公正は「建前」で、「本音」では採用競争に勝つことを優先すると公言していることと同じです。こうした「建前と本音」を使い分ける姿は、多くの方々からの信頼を失います。

会員企業からの「信頼」を失う

経団連の会長、副会長は、さまざまな分野で日本経済を牽引しているおよそ1300社の会員企業に対して、「採用選考に関する指針」の順守を呼びかける立場のはずです。そうした立場にありながら自らの会社が指針を守らなければ、会員企業はどうして指針を守ろうとするのでしょうか

会員企業の立場に立てば、会長・副会長の企業が守っていないならば、当然自社が守る意味はありません。今年の採用において、5月1日時点ですでに5人に2人が内定を獲得しているのは、外資系企業や中堅・中小企業からの内定が増えているからだけではありません。むしろ、比較的採用人数が多い経団連加盟企業が早期に内定・内々定を出している影響が大きいと考えられます。

学生からの「信頼」を失う

学生が社会に出る最初の一歩である採用において、露骨な「本音と建前の使い分け」が横行している状況は、学生が企業、ひいては社会への信頼を失うきっかけになると思えてなりません。実際の仕事で「本音と建前」が必要なシーンがあることは重々承知してはいますが、何も「入り口」でそんなことをしなくてもと思うのは私だけでしょうか。

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