ハワイの空に巨大旅客機、ANAに勝算はあるか スカイマーク争奪戦の産物がリゾート仕様に

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もっとも、考案したのはANAではない。ニュージーランド航空がエコノミークラス用に独自開発したエコノミー「スカイカウチ」が源流だ。ANAが同社にライセンス料を支払ったうえで、シートメーカーとともに自社仕様に仕上げた。ニュージーランド航空は2011年に初めて導入し、2014年末に日本路線でも販売を始めた。小さい子ども連れのファミリーやカップルの利用が多いという。

ニュージーランド航空がエコノミークラスに導入している「スカイカウチ」。ファミリーやカップルのほか、1人で利用する人もいるという(写真:Air New Zealand)

ANAのカウチシートは、大人2人で3席分、大人2人と子ども1人で4席分といった購入方法でなければ、せっかくのスペースを生かせない。通常、航空券は1人1席が原則だが、どのように購入するのか。

ニュージーランド航空では1列3席のスカイカウチを展開しているが、1人で3席を利用する場合は「1人分の通常運賃+片道8万円」、2人3席の場合は「2人分の通常運賃+片道4万円」、3人3席の場合は「3人分の通常運賃+片道1.5万円」という料金体系だ。ANAも、通常のエコノミー運賃に追加料金を支払えば利用できるようにする。

ANAが導入する「A380」型機のシートマップ(画像:ANA)

「面白いことを考えるなあ」。機内仕様開発の責任者を務める今田麻衣子・商品戦略部リーダーは、ニュージーランド航空でスカイカウチのサービスが始まった時から、その可能性に目を付けていた。そこにA380導入の話が出てきた。「席数が多いことは、機内のプロダクト開発にはプラスに働いた。これまで満たせなかったニーズへの対応で、一歩でも前進できていればいいなと思う」(今田氏)。

A380導入のきっかけはスカイマーク

これまで保有したことのない機材の導入で、座席やサービスの開発における発想の幅が広がったのは確かだ。ただ、A380はANAの戦略に必ずしも必要不可欠なものではなかった。

「スカイマークの件が導入に関する検討を加速したのは否定できない」。2016年1月にA380の導入を発表した際、ANAホールディングスの長峯豊之取締役(当時、現副社長)はそう語った。経営破綻したスカイマークのスポンサーを米デルタ航空と争ったANAは、最大債権者だったエアバスを味方につけるべく、販売に苦戦していたA380の購入をのんだ。「決めてしまったものは仕方がないので、活用方法を考えなければならない」。ある幹部がこぼした言葉もまた、本音だといえる。

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