石破茂氏、「トランプと渡り合う私のやり方」 ポスト安倍の有力候補があるべき政策を語る

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――アベノミクスをどう総括しますか。

大胆な金融緩和でマネタリーベースが増え、円が安くなった。輸出企業は儲かり、インバウンド需要が増えた。お買い得な日本の株が外国人に買われて、株価が上がった。大胆な金融緩和は、今までと違うショック療法みたいなところがあって、それが非常に効いている。アベノミクスの効果だけではないが、有効求人倍率も47都道府県で1を超えた。これらは起こるべくして起きている。いいことだ。

――ここから先、やるべきことは。

アベノミクスで閉塞感のある状況は脱した。こうして作った踊り場で、構造改革をいかに進めるか、だ。具体的には人口急減という、今までの経済学の教科書に書いていないことが起きる。推計によると、日本の人口は2100年には5200万人、200年経ったら1391万人、300年経ったら423万人へ急減する。一方で過去50年に65歳以上人口は6倍、85歳以上人口は26倍、100歳以上の人は429倍に増えた。人類が経験したことのない時代に入る。それを前提にした社会システムにどう変えていくかが問われる。

――解はありますか。

まだ答えを見いだしていない。ただ、ポテンシャルは地方にあると思う。私が掲げる地方創生政策は、何も都市の富と人を地方にばらまくという話ではない。霞が関が作った政策を地方が選択して実行するというこれまでのやり方から、日本全国1718市町村それぞれが、自分の地域のベストプラクティスはこれだ、と考えてもらって実践する方向に変える。これまでは公共事業と誘致企業によって雇用と所得が地方に生み出された。あるいは、人とモノとカネが東京に集中することによって、集中の利益を極大化させてきた。これらはもうどちらも通用しない時代だ。いかに地方自身が雇用と所得を生み出すか、東京が負うべき負荷をいかに軽減するか。その両方の解を見出すのが、これからの仕事になる。

「金利の急上昇を回避」、金融緩和の出口は慎重に

――大胆な金融緩和からの日本銀行の出口戦略はどうしたらよいですか。

今から声高に出口論を言うべきではない。大胆な金融政策も未来永劫続けられるものではない。それはみんなわかっていることだ。しかし、どの方向にせよ、急激な変化に対してはリアクションが大きくなる。それ(出口戦略の内容)は日本銀行に委ねられるべきことだろうし、引き続き、物価安定目標の実現に向けて日銀が努力していくことだろう。だが、どのような政策も時期を設定して急激にやるべきではない。ただ、政策目標という意味では、何も株価と円安だけがあるのではない。いかに売り上げを伸ばしていくか、いかにして労働者の所得を引き上げるか、ということも重視していくべきだと私は思っている。

――金融緩和では足りないので、財政出動をもっとやれという主張もありますが。

金融緩和にせよ、財政出動にせよ、サステナブル(持続的)かどうかを考えながら行うべきものだ。金融緩和をやめるというつもりはないが、財政出動には投資効果の出るもの、国民経済の活性化に資するものとの視点が重要ではないか。「まだ気合いが足りない」と言われてもそれは難しいのではと思う。

――"ポスト安倍"政権の登板時期は、大胆な金融緩和の後始末をしなければならない時期と重なります。石破さんが言うように、景気をよくすれば、金利にも上昇圧力が加わります。そのとき、日銀はどうしたらよいですか。

繰り返しになるが、金融政策は日銀の所管であり、私が具体的にどうこう言ってよいものではない。しかし一般論として、金利が上昇していくということは国債費(利払い費など)の負担が増えるということであり、財政のサステナビリティをいかに確保するかは考えないといけない。わが国は先進国で最悪の財政状況と言われ、金利の急激な上昇をいかに避けるかを追求しないといけない。だから、出口の時期を言ってはいかんと話している。そこは時間をかけるしかない。

――日銀の黒田東彦総裁への評価は。

財政健全化を前提としたうえで、今日の金融緩和を生み出した功績は大きいと思う。

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