ヤバすぎ「漫画村」がそう簡単に消えない事情 ニーズがある限り「いたちごっこ」が続く

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それは漫画村の手法が合法だからではない。漫画村のサーバーが海外にある場合、日本国の著作権を侵害していたからといって、ただちにそのサーバーを停止させるような措置を日本の警察や裁判所など実施できるわけではないからだ。つまり、違法ではあるが、直接的に漫画村のサイトが置かれたサーバーを規制することができなかったというだけに過ぎない。

漫画村の運営者が、あたかも合法であるかのような主張をしていた理由は、若年層も多いと予想される利用者に対して、罪の意識を和らげる意図があったものと推察される。実際、漫画村への批判を強める著作権者に対して、”なぜ無料で読者が楽しめるような努力をしないのか”と無邪気なコメントも(わずかではあるが)ネット上ではあったようだ。

ビデオリサーチインタラクティブによると、こうした海賊版漫画閲覧サイトの利用者は30万人にのぼり、漫画村以外にも同様のサイトは存在する。たとえ既存の海賊版サイトを閉鎖に追い込んだとしても、今後も類似の海賊版サイトが誕生するだろうことは想像に難くない。

背景には価値観の変化がある

一方でコミック業界の主な収益源であるコミックス(漫画単行本)の売り上げが低下すれば、漫画家を目指すクリエイターも減り、文化としての漫画が衰退するのも自然の摂理だ。出版科学研究所が2月に発表した数字によると、漫画業界全体の売り上げは1995年の5864億円をピークに下落に転じ、2017年には4330億円まで落ち込んだ。

しかし、コミックスに限っては電子版の普及によって購入しやすくなったこともあり、1995年の売り上げ2507億円から3377億円へと成長。デジタル版コミックスの売り上げが、紙のコミックス売り上げを上回った。

音楽や映像作品も”物理パッケージのコンテンツを所有する”という価値観が失われてきているが、漫画の世界でも”単行本を所有する”ことに対する価値観が変化しているといえるだろう。

このように価値観が変化する中で漫画村のような海賊版サイトが蔓延すれば、物理的な”単行本”が存在しないこともあって、コンテンツを無料で閲覧することへの罪悪感がますます薄れていくのではないだろうか。無料コンテンツが世にあふれる中、使える小遣いが少ない若年層が、漫画村のようなサイトで読むことにブレーキを掛けることは簡単なことではない。

では為す術もなく、海賊版サイトが蔓延した状態を受け入れるしかないのだろうか。

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