トヨタ「スープラ」復活までの知られざる裏側 伝統のFR・直6エンジンレイアウトを踏襲

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元々は86の兄貴分となるピュアスポーツカーの企画が発端だったというが、86のイベントで世界各国に行くと「スープラは復活しないのか?」、「86の次はスープラでしょ!!」といったラブコールを受け、その気持ちに応えることになったという。

BMW「 Z4」(写真:筆者撮影)

すでに兄弟車となるBMW「 Z4」はコンセプトモデルが昨年のフランクフルトモーターショーで登場。スープラの動向が注目されていたが、前述のように今回のジュネーブモーターショーでコンセプトモデルがお披露目された。驚きなのは市販モデルではなくレーシングカーであったことだ。ちなみにゼッケンは「90」となっているが、これは5代目(A90系)を示している。

正真正銘のレーシングカー

「雰囲気だけ似せたイメージではなく、LM-GTE(レーシングカーの車両規則の一つ)規定に基づいてドイツのTMG(トヨタモータースポーツ有限会社)で開発を行った正真正銘のレーシングカーです。本来はコンセプトモデルなので見た目だけでいいのですが、スポット溶接やロールケージなどもシッカリと行っています。

これにもちゃんと理由があります。これまで量産車→レーシングカーに仕立てる際に『量産車の段階でこうしておけばよかった』と後悔することばかりでしたが、先にレーシングカーを仕立てることで、量産車にもいいフィードバックができるというわけです」

スープラの開発はレーシングカンパニーである「GRカンパニー」が担当するが、モータースポーツを通じてクルマを鍛える……という部分は、このような所にも表れている。

ただ、一つ気になるのは、なぜ世界のモータースポーツカテゴリーに参戦可能なFIA-GT3ではなく、LM-GTE仕様に仕立てたのかということだ。

多田氏は「改造範囲が広いため開発に役に立つ」と語るが、恐らくトヨタの「ル・マン24時間」へのこだわりの表れだ。今年もWEC参戦を発表しル・マン24時間制覇を目指すが、総合優勝を狙うトップカテゴリーではなく市販車をベースにしたカテゴリーへの参入も検討されているのだろう。そう、ポルシェと同じように。

エクステリアはロングノーズ&ショートデッキの伝統的なFRプロポーションを採用。幅広のフェンダーや大型ウイング、リアディフューザーなどレーシングモディファイが施されているが、フロントマスクやリアフェンダーなどは懐古的ではないものの4代目の流れを汲んだデザインで、BMW Z4コンセプトとはデザインの共通性はない。ボディサイズはパッと見るとコンパクトな印象を受けるが、全長4575×全幅2048×全高1230mm、ホイールベース2470mmと4代目とほぼ同等だ。

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