ストーカー惨殺事件は、警察のミスによる人災 何度、女性が殺されなければならないのか

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効果に疑問の残る、警察の捜査マニュアル

私は以前より、警察の仕事の仕方に疑問を感じることが少なくなかった。私はその昔、東京に住んでいたのだが不幸にして留守中に空き巣に入られ、ドアを破壊され部屋の中から金品を大量に盗まれたことがある。部屋に帰ってきてドアが壊されており、引き出しが全てあけられていて中身が散乱している部屋を見るのは大変ショックなのだが、驚いたのはその時相談した警察官の対応であった。

まず彼らにゆっくりゆっくりと書類に色々書かされて、続いて部屋にやってきてなにやら丁寧に部屋の間取り図を書いている。ベッドの位置、お風呂の位置、キッチンの位置、テーブルの位置・・・。これをこれまた正確に書いているのだが、その間にきっと泥棒はどんどん遠くに逃げ去っていることであろう。

その丁寧で完璧な、そして犯人逮捕に何の役にたつのか不明な私の部屋の見取り図を書くのに何時間か使ったあと、私が相談した警官は部屋の押し入れを空けて「ひでぇな、これは蛇頭(当時中国から来ている窃盗団としてマスコミに騒がれていた)の仕業だな」などと、根拠もなく適当なことをつぶやいていた。

そしてあろうことか、変な白い粉を床にまいて、足跡をとって、「これは大柄の男性の足跡だな」とかいって、私のスリッパの痕跡を私に見せてきたときは、本当に日本の治安がどう守られているのか、心底不安になったものである。

世界各国に共通する、警察の惰性的対応

思えば私がスペインのバルセロナで窃盗に会った時に訪れた現地の警察も同じように無意味に長い書類に私の両親の本籍地や生年月日を書かせて待たせるだけ待たして、何カ所も書類にサインをさせて別に何もしてくれなかった覚えがある。

つい先日もパリで携帯電話を盗まれた時にダメ元で警察にいったのだが、そこでも私の両親の出身地や誕生日など家族の歴史をひたすら書かされ、「犯人を捕まえたら連絡する」と、犯人ではなく私の家族の歴史だけ捜査されて憤慨したものだ。

ここに浮かび上がるのは、警察は公務員でかつ競合相手もいないので、適切にモニタリングしないと官僚的で無意味な仕事に終始する、という構造的問題である。もちろん私は志高く市民の安全を守るために全力で危険を顧みずに勤務してくださっている警官の皆さんには敬意を抱いているが、そうは到底見えない警官が少なくないのも事実ではなかろうか。

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