ロヒンギャ難民キャンプで会ったドラえもん 過酷な環境に暮らす子どもたちの今

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ドラえもんの人形を見せるロヒンギャ難民の子どもたち(筆者撮影)

ミャンマー西部ラカイン州から隣国バングラデシュへのイスラム少数民族ロヒンギャの大量流入が始まって半年余り。バングラデシュ南東部コックスバザール県では3月上旬現在、100万人を超すロヒンギャ難民が避難生活を強いられている。

環境劣悪な難民キャンプにもかかわらず、やたらと目に付くのが元気な子どもたちの姿だ。彼らの存在は先行きの見えないロヒンギャ問題にあって唯一の希望になっている。

仲良し2人組のお気に入り

あれ、今の何だろう? 国境のナフ河を挟んでミャンマー領を望むバングラデシュ最南端テクナフ地域に広がるナヤパラ難民キャンプ。炎天の昼下がり、幼い男の子2人が小さな緑色の人形で遊びながら目の前を通り過ぎた。呼びとめてじっくり見ると、粗悪なプラスチック製の「ドラえもん」である。型が甘く輪郭のぼやけた哀しくなるような代物だが、こんな場所でドラえもんに出会うとは思わなかった。

アニスル(6歳)とモハマド(4歳)の仲良し2人組は、昨年9月初旬、それぞれの家族とともにナフ河を渡ってバングラデシュ側に逃れてきた。ドラえもんは、地元NGOが国連児童基金(UNICEF)の資金で運営するチャイルド・フレンドリー・スペース(子どもの遊び場)で1カ月前にもらったといい、ドラえもんの名前こそ知らなかったが、英語で“Cartoon”(漫画)と呼んで大のお気に入りである。

ご存じのとおり、ドラえもんの漫画やアニメは1970年代からアジア諸国を中心に世界で親しまれ、バングラデシュでは「ドリモン」として今も子どもたちに人気がある。

2人は毎朝6時にキャンプ内のマドラサ(イスラム学校)に行ってコーランを習い、9時からフレンドリー・スペースでお絵描きをしたり、ゲームをしたりして遊ぶ。午後はドラえもんと一緒に起伏の多いキャンプを駆け回り、きれいとは言えない溜め池で水遊びをし、サンダルを使ったメンコ遊びなどをして過ごす。2人にドラえもんの名前を教え、「毎日楽しい?」と尋ねると、はにかんでうなずき、歓声を上げて走っていった。

ロヒンギャ難民問題が今日、世界最大にして最悪の人道危機であることは論を待たない。昨年8月末以降、ミャンマー治安部隊によるロヒンギャ虐殺、女性に対する性暴力、あるいは難民キャンプの惨状が詳しく報じられ、筆者も被害を受けた難民の生々しい証言を数多く聞いた(『「家族11人殺された」ロヒンギャ少年の悲劇』参照)。

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