北朝鮮が核ミサイル放棄?それはありえない 交渉では細部にこそ悪魔が潜んでいる

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北朝鮮が核ミサイルを放棄しない理由として、まず金正恩委員長がこれまで「経済建設」と「核武力建設」を同時に進める戦略路線を採ってきたことがある。「並進路線」と言われるものだ。

トランプ大統領は前のめりで会談の誘いに乗った(写真:REUTERS/Leah Millis)

建国者で祖父の金日成が1960年代に打ち出した経済建設と国防を並進させるという路線の延長線上にある。2016年5月に36年ぶりに開催した朝鮮労働党大会では、党規約にこの「並進路線」を盛り込んだ

また、北朝鮮は金委員長が政権を担った2012年に憲法を改正し、「核保有国」としての地位を明記した。さらに、2013 年に最高人民会議が採択した法令には、自国の核兵器が米国に対して向けられた「自衛的手段」であり、世界が非核化するまで核開発を放棄しないことが示されている。米韓に対して非核化を口にした金委員長は、はたして本当にこれらの法的措置を撤回するつもりがあるのか、疑問が募る。

金委員長は2013年3月、朝鮮労働党中央委員会総会の報告の中で次のように述べている。少し長くなるが、金委員長の「核信奉」を如実に示す演説なので記したい。

金委員長の「核信奉」を如実に示す演説

「侵略者と侵略の拠点が地球上のどこにあっても、核兵器で精密攻撃できる能力されしっかりそなえていれば、どんな侵略者もおそいかかってくることができず、核攻撃能力が強大であるほど侵略を抑止する力はそれだけ大きくなります。とくに、わが国の場合は、相手が世界最大の核保有国であるアメリカであり、アメリカがわれわれに恒常的に核の威嚇を唱えている状況において、核武力を質的、量的に強化しなければなりません。強力な核武力のうえに平和もあり富強繁栄もあり、人民の幸福な生活もあります」

「われわれの核抑止力は、国と民族の自主権を守り、戦争を防いで平和を守るための正義の手段です」

こういう考えの持ち主が、核を放棄するとは考えられない。

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