安倍政権の「待機児童政策」は問題だらけだ 自治体は待機児童数を"過少報告"している

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現時点では供給に対して需要が大きく上回っているため、待機児童が出ています。純粋に受け取れば、あふれた需要がそのまま「待機児童数」となるはずですが、実際は違います。

国や自治体では、あふれた需要の中から、認可外保育所の利用者や育児休業中の保護者のほか、求職活動を休止したり、育児休業を延長したりした保護者の子どもの人数を引き、「待機児童数」として発表しています。国や自治体は待機児童数を少なく見積もっているのが現状です。

横浜市の待機児童数を参考に考えてみます。同市では2017年4月時点で、6万5144人が認可保育所に申し込み、6万1885人が入園しました。待機児童数は差し引いた「3259人」になるかと思いきや、同市は待機児童数を「2人」と発表しました。この差分「3257人」は“隠れ待機児童”と呼ばれています。

このような状況が多くの自治体で起きています。要するに政府は、実態を正確に把握しないまま、政策を推し進めているのです。

予算の使われ方にも問題がある

現在の待機児童政策は、予算の使われ方にも注意を払わなければいけません。

政府は、待機児童32万人分の受け皿を確保するため、3000億円の予算を考えています。しかし、これには保育士の処遇改善がまったく含まれていません。保育士は大変な人材不足に陥っており、解決するためには処遇改善は不可欠です。

また、消費税増税分のうち8000億円を無償化に使うといいますが、この使途にも疑問が残ります。

前述したとおり、多くの人が認可を希望しながらも、消極的理由で認可外保育所を利用しています。そして、認可保育所の利用料は世帯年収に応じた応能負担ですが、認可外保育所は応能負担ではなく定額で、かつ高額です。

それにもかかわらず、政府は無償化の対象に認可外保育所を入れるか否か決めかねているのです。

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