マレーシアが中国人旅行客を大歓迎する事情 最大の貿易相手国、春節時期はお祭りムード

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春節期間中は毎朝、獅子舞の踊りがロビーの目の前で披露された。ホテルの宿泊客だけでなく、近隣の住民も集まり大盛り上がりだ。獅子舞はみかんを一つひとつ口から放り投げ、それを観客がキャッチ。最後には口からなぜかレタスを大量に吐き出すパフォーマンスも。聞くと、レタス(生菜)の発音が「生財」という言葉に似ており、つまり財を成すという意味が掛けられているらしい。

ちなみに、観光客向けのホテルでは軒並み同様の行事が行われているほか、ある程度の規模のマンションでも独自に獅子舞を組織や学校に発注するなどして、大なり小なり春節の祝いが催されている。つまり、この時期のクアラルンプールでは、どこにいても見逃すことはないのではというほどあちらこちらで大きな銅鑼の音と派手な舞を目にすることができるのだ。

(左)獅子舞はげんを担いでみかんやレタスを口から吐いて舞う。獅子舞が去った後のホテルのロビーに巻き散らかされたままのレタスとみかんの皮の残骸。(右)この時期のクアラルンプールは、けたたましい銅鑼の音で叩き起こされる。街中の至る所で獅子舞のパフォーマンスを目にする(筆者撮影)

多宗教国家でも色濃い存在感を示す中華系の存在

中心街にある大型ショッピングモールを訪れると、天井から無数のピンクと赤の花びらが降り注ぐかのような、絢爛豪華な装飾が目を引いた。さまざまなショーが催される特設ステージへとつながる階段には赤い絨毯が敷かれ、両端には埋め尽くすかのように赤とピンクの造花や春節用のランタンが飾られている。観光客のみならず、地元のイスラム教徒の家族連れなどが次々に訪れ、思い思いにポーズを決めながら写真撮影に興じている。

天井から花びらが降り注ぐイメージでデコレーションされた絢爛豪華なショッピングセンター。イスラム教徒も宗教に関係なく春節を楽しむ(筆者撮影)

中国の高級食材を売る店舗では、アワビやなまこ、燕の巣などをこれでもかというほど詰め合わせた巨大な春節仕様のお祝いセットを販売。その額、約9万円。「いったい誰が買うのか?」と店のスタッフに聞くと、マレーシアでは中華系のみならずイスラム教など異教徒も贈答用に買いに訪れるという。

確かに、店内にはイスラム系やインド系の顧客もちらほら。あくまでお祝い名目の品であるため、富裕層がお互いに日頃の感謝を示す証として送り合うのだそうだ。ちなみに、クアラルンプールに3つの不動産を保有する中華系マレー人の家に、新年早々お邪魔する機会があったが、リビングの隅にその贈答セットが4つほど開封されずに押しやられていた。裕福な層になると、毎年のように受け取るお決まりの“高級お歳暮”のような存在なのかもしれない。

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