「電車のデザイン」色のラインは窓下から上へ 見た目だけではなく別の理由もある
従来、ステンレス製やアルミ製の銀色の車両といえば、窓下にラインを配し、窓上にはラインが入っていても細めというのが定番だった。JR中央線快速や山手線など首都圏の代表的な路線をはじめ、窓下に路線や鉄道会社のイメージカラーを入れたデザインは、特にステンレスやアルミ製の銀色の車両では一般的だ。
ステンレス製車両が普及する以前、旧国鉄の通勤電車は路線ごとのラインカラーで車体全体を塗装した車両が一般的だった。京浜東北線は水色、中央線はオレンジ、常磐線はエメラルドグリーン、総武線は黄色と、ひと目見てどの路線の電車かがわかるようになっていた。
早い時期から導入していた地下鉄や一部の私鉄を除けば、ステンレス製やアルミ製の車両が普及し始めたのは1980年代以降だ。国鉄末期の1985年から、東京の顔といえる山手線にステンレス製の205系電車が導入され、ステンレス車両全盛の時代が到来した。
ホームドアで下半分は見えない
205系はステンレスの銀色を生かしたデザインで、それまでの車両では全面塗装していた山手線の黄緑色(うぐいす色)は、窓下に太め、窓上に細めのラインカラーの帯を張り付ける形となった。窓上にも付けたのは、ホームの混雑時など車体の側面が見えない時でも、ちょっと見上げれば目に入るからである。だが、あくまで太めで目立つラインは窓下だった。JR以外の私鉄や地下鉄各線も、ほとんどは窓下にラインを入れた形だった。
これが変わり始めたのは、ホームドアの導入が進んでからだ。
ホームドアが設置されることにより、窓下のラインカラーは乗客から見えにくくなっている。その状況の中で増えてきたのが窓上のラインカラーだ。窓上のカラーリングが目立つと、車体の下半分が見えないホームドア設置駅でも車両の存在がはっきりし、複数の路線が乗り入れる駅などでは、どの路線の電車がホームに入ってきたのかがわかりやすくなる。
もちろん、窓上にラインを配した車両のすべてがホームドアの存在を意識したわけではないだろう。だが、ホームドアという施設が車両のデザインに影響を与えたのは確かだ。
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