中小企業が激減
──長年現場を歩かれた実感は。
とにかく事業者数の激減ぶりはすごい。とりわけ製造業は減少が止まらない。
個別産業への訪問をずっと続けているが、最近遭遇したのはたとえば糸染めや印刷製本関連の打ち抜き。糸染め業者は30年前に全国に1000以上を数えたが、今80。東京に限っていえば、90あったものが今や8にとどまる。装置産業の糸染めは、海外にミシンとともに出ればいい縫製と異なり、繊維関連でも国内に残った。残ったのはいいが、仕事は100分の1以下。儲からなくなって後を継ぐ人が極めて少ない。
もう1つの打ち抜きは簡単にいえば厚い紙を打ち抜く作業を手掛ける。ピーク時、全国に100ぐらいあったのが、今は5~6。そのうち続きそうなのは1業者のみ。ここだけは後継ぎがいる。
──創業も少ない?
国は新規創業を促そうと、各種の政策を打ち出している。ベンチャーキャピタルの創成やインキュベーター施設の開設もその一環。だが、それも閑古鳥。IT関係を含め創業意欲が非常に低下している。
数が減る一途なのは初期投資額が大きすぎるから。まともなものづくりをするうえで特にそう。今や中古旋盤1台を50万円で買って始めるといったのでははなからダメで、高額のマシニングセンターや放電加工機を入れないとスタートできない。それだけで1億円かかる。30代前半以下の男に1億円用意しろと言ってもそれは無理だ。とても始められない。
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