まだある!マンション「共用部」が超絶進化 「住むだけで健康になる」物件も登場

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同じような問題に直面したのが神奈川県にある「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」だ。総戸数497戸の同マンションで問題になったのは、シアタールームだった。

シアタールームには、大型スクリーンに最新の音響設備が備え付けられ、防音も完備している。しかも室料は1時間400円と格安だ。にもかかわらず、ほとんど利用されていなかった。このままでは開かずの間、メンテナンス費用だけがかかる負の遺産と化すのも時間の問題だった。

カラオケルームに進化

そこで理事会は知恵を絞り、持ち運び可能な中古のスピーカー付きカラオケ機器を購入。完全防音という特徴を生かし、シアタールームをカラオケルームとしても使えるようにしたのだ。購入したカラオケ機器はポータブル式なので、組合総会やクリスマス会などで拡声器としても活用できる。

「ザ・パークハウス横浜新子安ガーデン」のシアタールーム。いまはカラオケルームとしても使える(記者撮影)

このカラオケ機器の導入が功を奏し、徐々に利用者も増えてきた。特に小学校低学年か学童の子どもと一緒の親子連れが増えたという。すべてをデベロッパー任せにせず、「自分たちの所有物」という意識の下、管理組合が知恵を出しあうことで問題は解決できる、という好例といえそうだ。

「社内調整がいちばんの難関だった」。特徴ある共用部を作ってきた開発者たちからは、異口同音にこのような言葉が飛び出した。企画段階から「何をやりたいのかわからない」「それを作ったからどうなる」など辛辣な言葉を浴びた人も多い。「壁はまず社内にある」との名言も飛び出す。

特徴ある共用部は作るときから軌道に乗せるまで、担当者をはじめとする大きな熱量が必要になる。逆に言えば、特徴ある共用部がある施設は、それだけ熱意のある開発担当者がいた、という証かもしれない。

住友不動産やプレサンスコーポレーションのように、共用部には力を入れない、と最初から明言するデベロッパーもいる。専有部は購入した後でもおカネさえかければ、どれだけでも変えることはできる。だが、共用部は後から新たに作ることはほぼ不可能だ。金食い虫で負の遺産となるような共用部は問題外だが、ユニークな共用部はきっと生活を豊かにするはずだ。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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