邦画も作るワーナー映画の神髄とは  ウィリアム・アイアトン日本法人社長に聞く

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――ワーナーさんが洋邦逆転というのも時代の流れを感じさせます。

2001年に公開された『ハリー・ポッターと賢者の石』なんて最終興収203億円でしたからね。今年の夏の映画で言えば、『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』が17億円(見込み)、『パシフィック・リム』が16億円(見込み)、『マン・オブ・スティール』が11億円(見込み)といったところでしょうか。『マン~』は、出だしが15億円台に乗る勢いだったのですが、2週目が前週比50%くらいに落ちましてね。それがなぜなのかはちょっと説明しにくいのですが。洋画の根本的な力が落ちているのかもしれません。

――『パシフィック・リム』は口コミも広がっているようですが、最近の成績はどうですか?

あまり落ちていないですね。われわれも予算を組んだときは目標興収11億円ということで宣伝予算を組んだのですが、まさか16億円にまでいくとは思いませんでした。今でも毎日2000万~3000万円ずつくらい上乗せしていますからロングランできそうです。この作品はIMAXの成績がすごくいい。全国に16のIMAXシアターがあるのですが、きれいに16%のシェアがある。1館当たり1%ということになります。『ダークナイト ライジング』で10%超えというのがあったのですが、16%のシェアというのは初めてです。

日本における洋画の現状

――最後にワーナーさんに限らず、日本における洋画の現状をどうとらえていますか?

大作に関しては相変わらず、日本のお客さんにも足を運んでいただいていると思います。しかし大作ではない映画は、宣伝の仕方が難しくなってきている。テレビドラマを映画化するような邦画作品のほうが、お客さんになじみが深いのだろうとは思います。

洋画もテレビCMを打っているのですが、インターネットで出口調査をしたところ、『マン・オブ・スティール』は40%の方が題名を知らないという結果に。『ダークナイト ライジング』や『マン・オブ・スティール』などは、普通にテレビを見ていれば、4~5回は目にする機会があると思うのですが、この結果にはビックリでした。

一方、邦画の『藁の楯 わらのたて』に関しては知らない方は1ケタ台でした。そうなるとカタカナの題名がよくないのかなと思うのですが、一方で『パラダイス・キス』の数字はいいわけです。あれは原作の漫画の題名そのものがカタカナということもあるのでしょうが、題名のつけ方の難しさを感じています。単純な考えかもしれませんが、内容がわかる題名というものを探してもいいのかもしれないとは思っています。まだ作品名は言えないのですが、来年公開予定のとある洋画作品には、日本語のタイトルをつけられないかと提案をしているところです。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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