邦画も作るワーナー映画の神髄とは  ウィリアム・アイアトン日本法人社長に聞く

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そういうグリーンライト・システムを通じて、本社の承諾を得るのですが、基本的に内容については本社から注文がつくことはありません。文化の差もありますし、日本映画ですから。ただし、たとえば監督や主演俳優が今までどのような映画を作り、これくらいの興行収入を上げてきたという実績データは、当然、本社に情報として流しますし、それを基に本社と議論はします。それでも基本的にはわれわれに任されていると思います。数字さえ出れば本社もハッピーですしね。それと映画ですから、ある程度、本数を封切るということも大事になります。何本か公開された作品のうち、ヒットしない映画が出てくるということも、これは仕方がないですから。本数を作っておかないと、リスクヘッジになりません。

――ワーナーさんの特色として、ハリウッドで採用されている“リクルーテッド・オーディエンス・スクリーニング(モニター試写)”を邦画製作に取り入れていることもあると思います。

アメリカのスタイルとして、音楽や効果音などが完全ではない状態で、制作途中の映画をお客さんにテスト試写をやり、アンケートを取るということをやっています。その結果を受けて、監督や編集の方に、こういった意見があるのですが……、と相談させていただくわけです。多くは、「ここの描写がわかりにくかった」というような意見が多いですね。いずれにせよ邦画制作ではあまり聞かないスタイルだと思います。

――そのスタイルを取り入れるにあたって、制作者側からの戸惑いのようなものはなかったのでしょうか?

確かにわれわれも最初はハラハラしました。監督に物申すわけですから(笑)。でもわれわれは契約の時点で、これが条件ですと伝えていますし、それを踏まえたうえで(『るろうに剣心』の)大友啓史監督や李監督なども気持ちよく取り組んでくださっています。ただし、お客さんからこう言われたから直してくれというのではなく、お客さんの大半からこういう問題点が指摘されているということをわれわれが認識するための作業であり、もしそれを改善できる案があるなら、修正も検討したほうがいいのではないかと提案するということです。

(C)2013 Warner Entertainment Japan Inc.

カタカナの題名がよくないのか?

――全体として、洋画を何本、邦画を何本くらい封切ろうといった割合は決まっているのでしょうか?

特には決まっていません。来年は、今のところ22本封切る予定なのですが、そのうち12本が邦画で、10本が洋画となる予定です。現在、撮影中の『るろうに剣心』の2と3のように、すでに発表されている作品や、まだ企画段階の作品もあるのですが、来年は、洋画と邦画が初めて逆転することになります。

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