中国人観光客が「白タク」に乗りたがる理由 中国の高所得者層は渋滞でも「自動車通勤」
中国人観光客を対象にした違法白タクが日本各地で摘発されていることが社会問題になっている。これはインバウンドビジネスにまつわる重要な課題だと言えるだろう。
普通の自家用車をタクシーとする白タクや、いわゆる運転手付レンタカー(レンタカー利用の旅行者に対して運転手を手配する)は、検挙しにくいこともあり、余計に問題になっている。最近では、「白タクに乗らないでください」キャンペーンや、白タクを検挙したというニュースも散見する。
ちなみに、「白タク」という名称は営業許可を受けたタクシーは緑地のナンバープレートをつける必要があるが、無許可の場合、自家用車と同じ白地のナンバープレートでタクシー営業をしていることが由来となっている。
「白タク」はもちろん違法だ。道路運送法は自家用車が有償で客を乗せる「白タク」を禁じており、運転手は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」などが科される。タクシー事業の営業認可とともに、運転手は2種免許の取得が義務付けられている。ただ、利用者には罰則はない。
しかしながら、2020年の東京五輪・パラリンピックまであと2年半あまりとなった。観光立国の実現に向け、日本の宿泊業と運送業には変革が必要であることは、多くのインバウンド有識者が発言している。
今回は、訪日中国人が白タクに乗ろうとする中国国内事情と中国人心理を分析してみる。
車通勤は当たり前の中国
「日本では部長でも電車で通勤するの!?」
とびっくりしたのは、共同研究をしていた北京大学のA教授だ。筆者が中国に行ったとき、北京での最初の懇親会では、北京と東京の違いで大いに盛り上がった。その中で北京の交通渋滞が酷くて毎日の通勤はすごく時間がかかるとA教授が話したのに対し、同席した日本人上司は「でも、満員電車に乗らずに済むのはいいですね」とフォローした。
「何!? 部長は電車で通勤しているの!? 中国だったら、管理職の人は車で移動しないとおかしいよ。」とA教授が驚きの表情で返す。そしてそれを聞いてさらに驚いた上司の顔は、今でも鮮明に覚えている。東京や大阪では電車通勤は当たり前なのに対し、中国の都市部では、自動車を買えない人だけが「仕方がなく」電車に乗るのだ。
車は中国では、どういう存在だろうか。
中国の自動車市場は、沿岸部の大都市から内陸部の新興地方都市まで、成長の一途をたどり、日本のブランド車も最近人気になっている。高度成長期の日本と同じく、自動車保有は資産の象徴とされ、お金が貯まったら、まず車を買うのが一般的だ。
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