稲田朋美氏「もう一度、防衛大臣をやりたい」 防衛大臣辞任後に考えたこととは?

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防衛装備品の調達についても、見直しが必要ではないか。特に、国産品での調達が可能であれば、積極的に導入すべきだと思う。もちろん、技術面での特殊性のみならず、採算面など課題はある。また、機密保持にも最大限の注意を払わなければならない。ただし、日本の技術力は非常に優秀だ。それを支えるすばらしい中小企業が全国に数多い。国産を前提とした防衛技術の確立は、きめ細かく進めれば成長の余地が大きく、地方創生にもつながるだろう。

さらには、ミサイル防衛など防衛費の増額が必要な局面において、従来の装備品調達には、まだまだ効率化できる面も多いように感じた。

どのような組織でも、つねに改善の余地はある。ただし、その中や周辺にいると、見えなくなることは少なくない。防衛族ではないからこそ、私にしか見えないこともあった。

現在、最も重視すべきはテロ対策

現在、3自衛隊をより機動的・有機的に運用する余地、むしろ必要性は広がっていると思う。

時代によって、陸海空の3自衛隊の役割、そして重点は変わらざるをえない。いまは尖閣諸島など島嶼部の防衛が最重要課題であり、陸自に新設した水陸両用部隊のほか、海自と空自の役割が増大している。防空識別圏へ入る外国軍機も多く、航空自衛隊機によるスクランブル発進の回数は急速に増加している状況だ。

だからこそ縦割りではなく、横串を刺すことを進めていかなくてはならない。さらには、自衛隊のみならず、海上保安庁との共同訓練や連携なども今まで以上に強化する必要があるだろう。もちろん、テロ対策や海からの不法上陸者への対応を考えた場合、警察との連携も同じだ。

現在、最も重視すべきはテロ対策にほかならない。国内の治安を維持し、国民の安全を守るためには、自衛隊や海上保安庁、警察が総合的に対処する必要のある事態が生じることも想定される。さまざまなケースを想定し、いかなる場面にも対応できるよう準備を進める必要があるだろう。

たとえば私の選挙区である福井1区は日本海に面しており、北朝鮮に近い。地元の皆さんは不審船などに関心も高い。原発の防衛についてご質問をいただくこともしばしばだ。「福井県に自衛隊を配備してほしい」という声も聞く。もちろん、福井だけでなく、島国である日本にとって、海岸線の防衛は喫緊の課題だ。

防衛大臣としての1年間を振り返り、一方で痛感したのは、現在の日本が非常に厳しい安全保障環境にあり、その厳しさは増している点だ。

もちろん防衛大臣として機密を守ることに細心の注意を払わなければならない。それを前提としたうえで、さまざまな情報に触れるにつれ、日本の置かれた安全保障の現状をできるだけ丁寧に国民の皆さんに伝えなければならないとも思った。自衛隊では、基本的に毎週、4人の幕僚長が記者会見を行っているが、国民の皆さまに関心を持っていただいているとは必ずしも言えないだろう。

また、自衛隊幹部が国会に呼ばれて国民の代表である衆参両院の議員に直接説明することもない。私は、現場の実情をお伝えするうえでは、制服組が国会で説明することも含め、さらなる説明責任を果たすような環境整備を考えていくべきだと思う。

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