2018年に投資家が注視すべき2つのチャート 米国利上げの影響と中国の経常収支がカギだ

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膨大な債務残高は中国経済のリスクであるが、重要な点はこれがきちんと国内でファイナンスされているかどうかである。これを確認するには、外貨準備高の推移に注目すべきだ。外貨準備は海外から稼いできた資金(経常収支)から海外に投資した資金(資本収支)の差額であり、国内の資金がどの程度流出してしまったのかを見る指標となる。

中国の外貨準備が減少してくると、要注意だ

2014年は4兆ドル近くあった中国の外貨準備は1年半ほどで約3兆ドルと、日本円に換算して100兆円以上が流出していた。

UBSでは外貨準備額2.5兆ドルは、中国当局が規制を大幅に強化せざるをえなくなる水準、また2兆ドルを下回ると為替を十分にコントロールできなくなる水準とみており、赤信号だ。

中国リスクが意識されてくるとアジアを中心とした株式は大きな影響を受けるだろう。グローバル景気後退の懸念も起こりやすく、金・銀などのコモディティや長期の債券などへの分散投資が望ましい。通貨としては安全通貨とみられている日本円やスイス・フランが恩恵を受けるが、米ドルもまた、資金の流入が見込まれる。

現状の輸出環境や企業・家計センチメントから見れば、2018年の資産配分はまだ強気で見るべきだろう。投資の期間を6~12カ月程度で見るならば、米国の逆イールドや中国のハードランディング懸念が強まる可能性は低い。しかし、中国の規制強化がどの程度進み、どの程度資金の流れに影響を与えるのかは不透明だ。米国のイールドカーブもフラット化が進んでいる。これらは中長期的なリスクは高まっているとみることもでき、「短期は良好も中長期の不確実性に備える局面」と言えるだろう。

青木 大樹 UBS 証券チーフ・インベストメント・オフィサー

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あおき だいじゅ / Daiju Aoki

2016年11月より、UBSウェルス・マネジメント、チーフ・インベストメント・オフィス、日本におけるチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO:最高投資責任者)兼日本経済担当チーフエコノミスト。2010年8月、UBS証券会社(現UBS証券株式会社)に入社後、インベストメント・バンク、ウェルス・マネジメントにて経済調査、外国為替を担当。2001~2010年までの9年間、内閣府にて政策企画・経済調査に携わり、骨太の方針の策定や経済財政の見通し・影響・分析などを担当。2006~2007年の安倍政権時には、政権の中核にて「骨太の方針」の策定など政策企画を担当した。ブラウン大学大学院にて経済学修士号取得。

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