「上から目線」の経営者が嫌われるのは必然だ タテ型社会は崩壊し、ヨコ型社会に変わった

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「ヨコ型構造」に移行した2つ目の要因は、多くの国が豊かになったからです。数十年前の世界で、経済的に豊かな国は数えるほどしかありませんでした。アジア諸国も中東諸国も、貧困に沈潜していました。そのような状況の中では、おのずとタテ型社会しか築くことはできません。支配者と被支配者、富める者と貧しき者の格差は、トマ・ピケティが言い出す前のほうが、大きかったと言えるのではないでしょうか。

被支配者は支配者に服従、貧しき者は富める者に卑屈屈服。そこに反感・抵抗で国民、市民、労働者が爆発的行動に出る。珍しいことではありませんでした。もちろん、いまでも国によって、依然として支配者と被支配者、富める者と貧しき者の社会、国家が存在するのは否めませんが、これも、見方にもよりますが、かなり少なくなってきていると言えるのではないでしょうか。それもこれも、社会が豊かになったからだと言えます。

もっと身近に、日本の会社ということで考えてみても、たとえば、以前は、会社をクビになることは、イコール食べていけなくなることを意味しました。ですから、たとえ上司から理不尽な指示や叱責があっても、じっと我慢していました。そういう時代では、上位の者が命令し、管理し、下位の者は服従し、画一的に従属しなければならず、個性も自己主張も許されることはありませんでした。

しかし、そのような「貧困からの脱却」をして、「豊かさの享受」をするようになると、人々は、必ずしも所属する集団や組織、国家にしがみつかなくても生きていける時代になりました。

生産者優位の時代は、過去の物語。価格決定権は消費者に移行しました。会社の人事も、命令や強制では、社員は動こうとしなくなりました。本社勤務より地元で結構という社員が多くなりました。私の経営者塾の参加者である、名古屋の建設会社の社長は、社員を転勤させないということを経営方針の1つに掲げています。

食べられるか食べられないかという時代は、とうの昔になくなりました。豊かな時代になっても、豊かさの中の貧困は厳然として存在しますが、わが国のように、その気になれば、食べられるような時代になると、多くの人は、それぞれ自由に考えるようになり、その結果、おのずとそれが価値観の多様化へとつながってきたと思います。

超・情報化は確実に進化していく

3つ目の要因は、超・情報化、BARIS革命でしょう。今は、ITは、もうカビが生えるほど古い言葉になりました。今は第4次産業革命、インダストリー4.0が進行しています。私は、それを「BARIS革命」(Big Data、AI、Robot、IoT、Economy Sharingの頭文字)と呼んでいます。

この革命が異常な速度(exponential)で進行し、加えて、GNR革命(Genetics、Nanotechnology、Roboticsの頭文字)が積算されると、2045年以降は、もはや人間の想像不可能な世界になるのではないかということも言われています。そうなるかどうかはともかくとして、異常なまでの超・情報化は確実に進化していくでしょう。

超・情報化の時代になってくると、知識のレベル、技術のレベルでの上下関係は、ますます皆無となるでしょう。いや、若者が年長者より、新入社員が先輩より、部下が上司より、その情報量ははるかに上回るだけでなく、最新の先端知識、新鮮な情報を豊富に持っているようになります。

もちろん、その傾向は1990年代から始まっていますが、若い友人たちほど、新情報、情報量を持っているでしょう。ますます、そのような時代になってくると、タテだ、上下だ、命令だ、管理だなどと、従来の「刀」を振りかざすことは、もはや不可能ということになります。

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