SNSでは、なぜ「デマ」が一気に拡散されるのか ユーザーが騙されやすいワケではない
ラスベガス銃撃事件で出回ったデマ
ラスベガスで起きた銃撃事件の数時間後。バージニア州に住むトラビス・マッキニー(52)のフェイスブックのニュースフィードには、さまざまな陰謀論を唱える投稿が表示されるようになった。曰(いわ)く、警察の発表はうそだ。ホテルにいた銃撃犯は1人ではなく複数だった。保安官は商売への影響を最低限にとどめたいカジノ経営者のために隠蔽工作をしている……。
その次に雨後の筍(たけのこ)のごとく出てきたのは政治的なうわさ話だ。銃撃犯は反トランプの左翼過激派だったと主張するものもあれば、オルタナ右翼のテロリストだという説もあった。そんなまったく根拠のないデマが、いつものおしゃべりやニュースや自撮り写真の中にいきなり現れたのだ。
「そんなものが300〜400人の(友達やフォロワー)のネットワークから飛び出してきた」とマッキニーは言う。中には親しい人々からのものもあった。
だがマッキニーは、銃撃犯が1人だったことを知っていた。拳銃のインストラクターで防衛産業で働く彼は、携帯電話のアプリを使ってラスベガスの警察無線を聞いていたからだ。「すぐにインターネットにアクセスして、そういうくだらない投稿への反論に努めた」と彼は言う。
米連邦議会の複数の委員会ではこれから数週間にわたり、フェイスブックやツイッターの経営幹部を呼んでロシアのハッカーらがSNSを利用してデマの拡散、ひいては選挙に影響を与えようとしたとされる問題について尋ねることになるだろう。昨年の米大統領選挙でフェイスブックは、10万ドル相当を超える広告枠をロシア政府と関係のある企業に販売。グーグルも4500ドル相当以上の広告枠を、ロシア政府と関連があると見られるアカウントに販売した。
ロシア政府の息がかかった業者は無数の偽アカウントやウェブサイトを作るとともにグーグルやフェイスブックの広告枠を大量に買い、根拠のないデマを拡散させた。政治的な立場の違いに沿った社会の分断を招くのが目的だったとみられ、ある専門家はこれを「文化的ハッキング」と評した。