SNSでは、なぜ「デマ」が一気に拡散されるのか ユーザーが騙されやすいワケではない

拡大
縮小

ナイハンらが過去の研究調査(党派的なニュースサイトの分析やニールセンのデータなど)を分析したところ、結果は逆だったという。大半の人が思ったよりもさまざまなものを読んでいた。みんな、自分が共感できるような怒りのメッセージばかりに囲まれていたわけではなかったのだ。

受け狙いが優先するSNSのアルゴリズム

にもかかわらず、人々はうそのニュースの急速な拡散に一役買ってしまう。SNSのアルゴリズムはある程度まで、進化的な選択を行う。ほとんどのデマやうそのうわさは広がらないが、ごく少数の魅力的な都市伝説めいたものだけが人々の心を引きつけ、拡散されるのだ。

拡散しそうな投稿の決まった書き方といったものはない。だが専門家によれば、ピザゲートの件をシェアした人々の政治志向がなんであれ、拡散に大きな役割を果たしたのは話の下品さそのものだという。

「私の経験では、こうした記事が出回ると、人々はえてしてじっくり読みもしないで仲間に回す」と、冒頭のマッキニーは言う。「(話の出どころを)よく確かめもせずに会話に加わるんだ」。

SNSは「自らの生き残りのため、効率的に世間に受けるネタを見分けるのが危険なほどうまい。その一方でこうした拡散ネタはえてしてうわさや陰謀論で、訂正するのが非常に難しい」とナイハンは言う。

原因の1つはネット上で情報がシェアされる速さにあると彼は言う。「ネットのおかげで情報は非常に早く伝わるようになり、ファクトチェックが追いつかなくなっている。アルゴリズムで拡散すべきでない扱いになったときにはすでにデマは広がっている」。

フェイスブックなどのSNSは靴や化粧品の「マーケター」として機能しているが、同じようにデマのマーケターでもある。2015年、フェイスブックの行動科学の専門家3人が『サイエンス』誌上で発表した研究結果は、大きな議論を招いた。

3人は政治的な意見を投稿した米国の約1000万人のユーザーのニュースフィードを分析し、考えの異なるニュースや投稿の表示が減るかどうかは、フェイスブックのアルゴリズムが決めた優先順位(それぞれのユーザーが関心を持つかどうかを、本人が提供したデータを基に判断する)よりも「各人の選択」の影響のほうが大きいと結論づけた。

これに対し外部の専門家からは、自社のためになす議論だとの批判が出た反面、偏見にとらわれないしっかりした分析だと評価する声も聞かれた。

そしてもう1つ、デマの拡散の一助となっているのは生物学的なハードウエア、すなわち人間の脳の「認知バイアス」だ。

次ページ親しい友人から得た情報を重んじる傾向
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT