日本株、記録づくめの好調に潜む暴落リスク 大相場を予感する一方で過熱感や不安材料も

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象徴的なのはソニーである。スマートフォン向けのイメージセンサーが好調で、期初に5000億円だった2018年3月期の予想営業利益を10月31日に6300億円に上方修正した。同最終利益を2550億円から3800億円へ上方修正、10期ぶりに過去最高益を更新しそうだ。

「エレクトロニクスの中枢部分である半導体、液晶、テレビ、パソコン、スマートフォンで日本メーカーは惨敗したが、その周辺分野で非常に強いプレゼンスを持っている。その象徴がソニー。イメージセンサーという周縁分野で世界的に高いシェアを持っている」(武者氏)

11月7日の終値2万2937円は25年10カ月ぶりの高値水準となった(撮影:梅谷 秀司)

好業績はソニーに限らない。11月2日には総合商社の三井物産が上方修正。航空大手の日本航空とANAホールディングス、鉄道大手のJR東日本、私鉄大手の東武鉄道、衛生陶器最大手のTOTO、建設機械世界2位のコマツなど幅広い業種の大手企業が通期見通しを上方修正している。

日を追うごとに業績見通しが改善

東洋経済の調べでは、今期の予想営業利益は全上場企業合計で、6月時点では前期比8.2%増益予想だった。それが9月には9.3%増益予想に、11月頭には10.3%増益予想と、日を追うごとに業績見通しが改善してきている。

外部環境の良さも否定できない。まず、世界中の景気が良い。2016年9月以降、日米欧中の景況感指数は目安の50を超えている。世界同時好景気を受けて、米国、英国、ドイツ、韓国、インド、ブラジル、フィリピンの株価指数が史上最高値を更新しているほど好景気だ。

急激な円安も株高に拍車をかけている。9月8日に1ドル=107円台まで進んだ円高はその後に反転。わずか2カ月弱で10月下旬には113円台まで円安が進んだ。円安が進めば、ドル建ての輸出が多い日本企業の業績は上向く。それを見越して日本株は買われやすくなり、株価が上がりやすくなる。

一方で、上げすぎの印象は否めない。日経平均株の年初来安値は4月17日の1万8224円。そこから7カ月たらずで、11月7日に年初来高値の2万2937円をつけた。上げ幅は4713円、上昇率は23%だ。急激に上げた反動で株価が暴落する可能性もなくはない。

「バフェット指数」も世界的な株式投資の過熱を示している。株式時価総額の世界合計を名目GDP(国内総生産)の世界合計で割った指数のことで、過熱の目安である1を上回っている。1990年代後半から2000年代初頭のITバブルなど過去にバフェット指数が1を上回ったケースでは、その後に世界の株式時価総額は大きく下げている。

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