駅ゴミ箱「テロ対策」はビニール袋で解決する なぜ要人来日時にゴミ箱が使えなくなるのか

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このような背景もあり、ロンドン市役所は無料の朝刊紙「メトロ」や市内の清掃に努める市民団体と共同で、透明ビニール袋タイプのゴミ入れを導入した。ロンドン交通局はこのゴミ入れについて「常に厳しい安全上のチェックを行っている」とした上で「保安上に適した場所に設置を行っている」と説明している。

ロンドンでは、日本のように要人が来たからといって駅構内のゴミ袋を撤去することもない。貯まっているゴミが外から丸見えというだけでなく、地下鉄駅構内に設置されたゴミ入れはすべて監視カメラ(CCTV)により見張られているからだ。

日本でもゴミ袋を導入してはどうか

ゴミ入れについて本当に「厳しい安全上のチェック」が行われているのか気になった筆者は、地下鉄駅にあるゴミ入れの周辺をランダムにチェックした。どの駅でも確かにすぐ近くにしっかりとカメラが取り付けられ、不穏な動きがあったらすぐに察知できる手はずが整えられているように感じられる。

不特定多数の人々が利用する駅や列車でのゴミ処理問題は、日本に限らず各国の運行事業者にとって頭の痛い問題だ。解決に向けての施策としては、簡単な仕掛けで対応できるゴミ袋を設置すれば、ずいぶんと改善するのではないだろうか。

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、ますます多くの外国人観光客が日本にやってくる。ロンドンの例をみてわかるとおり、ゴミ捨てに対する考え方は国によって違う。こうした「ゴミ捨てに関する意識が違う外国人」向けのゴミ対策について東京メトロは「検討中」とのみ答えている。交通機関各社には、新たな知恵と努力でこれまでと違ったゴミ回収の方法を講じてもらいたいものだ。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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