駅ゴミ箱「テロ対策」はビニール袋で解決する なぜ要人来日時にゴミ箱が使えなくなるのか

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首都圏をはじめとする駅ホームなどには、中身が見える透明のゴミ箱の設置が進んでいる。あやしいモノをゴミ箱に仕掛けられないように、といったテロ対策の意味合いが大きいのだろう。1995年に起きた地下鉄サリン事件のあと、駅構内のゴミ箱をいったん撤去したが、2004年にJR東日本、2005年に東京メトロが透明パネル部分に塩化ビニールを使ったゴミ箱を相次いで設置した。業界団体・塩化ビニル環境対策協議会はこの「透明ゴミ箱」が設置された際、「何が捨てられているか、外からひと目で見えるため、不審物チェックやテロ対策など、警備面で大きな効果が期待される」とその効果を説明している。「透明ゴミ箱」は、ゴミの投入口をより小さくしてあり大きなゴミは入れられないようにしてあるほか、施錠して中身を取り出せないようになっているのは周知のとおりだ。

一方、2005年に公共交通機関の同時多発テロが起きたロンドンの現状はどうだろうか? このテロ事件では、ロンドン中心部の地下鉄3カ所と2階建てバスでほぼ同時に爆発が起き、全部で56人が亡くなる痛ましい事件となった。その後、駅構内のゴミ箱は、日本の地下鉄サリン事件後と同様、一気に減らされた。

英国では「ゴミ袋」が大活躍

しかし現状では、地下鉄、旧国鉄のナショナルレール各駅ともに、大きな透明のビニール袋を下げるだけの簡素なものが多用されている。「中身が丸見えで怪しいモノを仕掛けにくい」という理由によるものだが、回収時は「袋を外して交換するだけ」と維持管理が簡単というメリットもある。

ロンドンの駅構内では至るところにゴミ袋がある(筆者撮影)

ロンドンの地下鉄構内にこのタイプのゴミ入れが登場したのは2011年6月のことだ。英国では、2005年の同時多発テロの以前にもアイルランド独立闘争を行ってきた武装組織・アイルランド共和軍(IRA)が、公共の場にある金属製のゴミ箱の中に再三に渡って爆弾を仕掛けるテロ行為を働いていた。

その当時、爆発によって多くの市民が割れたガラス窓などでケガをすることも多かったという。ちなみに現在、IRAの動きはほぼ沈静化している。

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