同じ距離で違う金額「特急料金」は明朗会計か 数多くの特例、消費者に対する説明は十分?

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たとえば、東京―新横浜間の途中には品川駅があるが、同駅の開業は2003年10月1日。熊谷―高崎間にある本庄早稲田駅は2004年3月13日の開業であり、どちらも路線の開業時は隣接する駅同士であった。隣接駅同士の新幹線自由席特急料金が特例により割安に設定されていることは、西日本旅客鉄道(JR西日本)プレスリリース「北陸新幹線の運賃・特急料金などについて」などで明言されている。

だが、隣接駅または過去に隣接駅であったことがない区間であるにもかかわらず、自由席特急料金が隣接駅と同額に設定されている区間がある。

その1つの例が、先述したJR東日本の東北新幹線・東京―大宮間30.3kmである。東京―大宮間の自由席特急料金は、隣接駅特定特急料金860円に210円が加算された1070円となっているが、東北新幹線が東京まで延伸されたのは上野―大宮間の開業より6年以上も後の1991年6月20日のことであり、東京と大宮が隣接駅であったことはない。

もう1つの例は、JR九州の九州新幹線・博多―久留米間35.7kmである。同区間については、2011年3月12日に博多―新八代間が開業した当初から隣接駅ではないものの、隣接駅に適用される特定特急料金850円と同額だ。しかし、同区間よりも距離が短い久留米―新大牟田間33.6kmの自由席特急料金は1230円と1.4倍以上の開きがある。この点についてJR九州広報室は「博多―久留米間は特に多くのご利用が見込める区間であり、利用促進を図るために特定料金としている。他はすべて隣接駅のみ850円に設定している」と説明する。

しかし、こうした説明は、各社のウェブサイトや時刻表においては掲載されていない。

特急料金100円の路線もある

また、在来線についても、JR旅客営業規則第57条第1項第1号ニの(ロ)で定めた特定区間または(ハ)の規定により正規と異なる特急料金を定めている場合がある。例としては、鳥取―出雲市間(100km以内の区間を除く)、御殿場線の特急「あさぎり」、博多南線などがある。特に、博多南線博多―博多南間8.5kmの特急料金は100円と極めて割安に設定されている。

博多南線は山陽新幹線の博多総合車両所までの回送線を旅客化した路線であり、鉄道ファンの間では、「運賃・特急料金合わせて300円で新幹線に乗れる路線」として有名であるが、新幹線ではなく在来線扱いで、かつ全営業列車が特急列車扱いとなっているため、乗車には運賃と特急料金が必要である。

だが、同線は福岡県春日市・那珂川町と福岡市博多区を結ぶ生活路線としての使命を担っており、正規の特急料金とすると通勤・通学に支障が出ることになる。そうした配慮で、割安な特急料金が設定されていると考えられるが、これは特殊な例といえる。

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