上越新幹線「秘密兵器」で鈍足を返上できるか E7系試験車両の屋根に設置された「あの物体」

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東北新幹線・大宮―宇都宮間でのE2系、E7系の最高時速は240kmに制限されているが、これも騒音に関する地上設備の仕様によるものだ。余談だが、パンタグラフ遮音板を設置したE5系、H5系、E6系では大宮―宇都宮間でも時速275km運転を行っている。

現在の上越新幹線の主力車両であるE2系(写真:studio EVO)

つまり、上越新幹線の地上設備の防音設備も時速240kmで設定しているため、最高速度を引き上げる場合は地上設備もしくは車両側で騒音対策を講じなければならない。

上越新幹線の地上設備を改良して最高速度を引き上げる場合、大清水トンネルや中山トンネルなど、長大トンネル区間が4割あるとしても、地上区間の距離も意外と長く、工事費用や工事期間の確保、工事中の沿線への配慮など、考慮しなければならない点が多い。

スピードアップが必要なもう1つの理由

一方で、車両側にパンタグラフ遮音板を設置する場合、E7系11本についてはこれから新造するのだから、費用はそれほどかからないと思われる。またE2系や既存のE7系にパンタグラフ遮音板を後付け設置する場合もすでに前例があるわけで、それほど大きな問題ではないと思われる。

速度向上試験ではE2系にもパンタグラフ遮音板が設置されている(写真:studio EVO)

今回の上越新幹線スピードアップの検討は、東京―新潟間だけの話にとどまらない。現在新潟駅の在来線の高架化工事とあわせて上越新幹線と在来線特急「いなほ」の同一ホーム乗り換えも実施される計画となっており、東京と庄内エリアの移動に伴う所要時間の短縮も狙いの1つだと考えられる。むしろそれを視野に入れているからこその上越新幹線のスピードアップだといえる。

上越新幹線の速度向上試験は11月末まで行われる予定となっており、この試験の結果を受けて上越新幹線のスピードアップが実施されるかどうかが決まるものと思われるが、ぜひともスピードアップを実現してもらいたいところだ。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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