スナックにはなぜ「オモロイ人」が集まるのか 重い扉の向こうにある現代の娯楽施設

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このようにスナックは、外観からは想像し得ない、驚きと感動が詰まった「エンターテインメント・ボックス」なのだ。

また、常連客にも個性的な人が多い。昔なじみもいれば、数軒ほどはしごしてきたという人もいるだろう。酔っ払っている人もいればシラフの人もいる。みんな、ママの魅力に惹(ひ)かれてその場にいる客たちである。

通えば通うほど、スナックの魅力は浸透してくる。ママや客との人間関係ができてくるに従い、スナックは居心地のいい場所となるのだ。まさにアットホームな雰囲気に包まれた交流空間である。店舗ごとの独特な空気と個性、そして人々との交流を楽しんでもらいたい。

下呂温泉では…

スナックの魅力その②「地域の情報サロンとして」

出張や旅行で地方に行く機会があったら、タクシーの運転手にオススメのスナックを紹介してもらうといい。なぜならスナックは、その地域ならではの「情報サロン」としての役割も担っているからだ。

スナックは大人の地域コミュニティである。「地方都市のスナックから『日本文明論』が生まれる理由」(2017年8月7日付ニューズウィーク日本版ウェブ編集部)によると、店舗によっては、地方議員やPTAの関係者、青年会議所、農協、消防団の人などが集い、情報交換が盛んに行われている。話が弾めば、地元の人しか知らない穴場スポットを紹介してもらえるかもしれない。

【11月8日19時00分追記】 上記の「店舗によっては、地方議員やPTAの関係者、青年会議所、農協、消防団の人などが集い、情報交換が盛んに行われている」との記述は2017年8月7日付ニューズウィーク日本版ウェブ編集部「地方都市 のスナックから『日本文明論』が生まれる理由」からの引用です。 本文内に出典を明記すると共に、 出典を明記しなかった点についてお詫びします。

特に地方には、地元愛にあふれている人が多い。そのような人は、積極的に情報を提供してくれるだろう。名産品や観光情報、あるいはホテルなどの宿泊施設に至るまで、地元の人から得られる情報はかけがえのないものだ。

前にこんなことがあった。岐阜県の下呂温泉を訪れた時のことだ。看板に惹かれて扉を開くと、店内はほぼ満席。カウンターに座って一息つくと、背後から「下呂温泉の今後」について、熱い談義が漏れ聞こえてきた。どうやら、温泉協会関係者の集まりのようだ。

いつしか、彼らに混ざって会話や歌を楽しむ自分がいた。私は、その場の雰囲気にすっかり溶け込んでしまったのだ。しばらくすると、ひときわ貫禄のある男性に呼ばれ、下呂温泉の旅行行程について話すと、ドスのきいた声で「あそこは行っても面白くない。ここへ行け!」と言われた。後にわかったことだが、そこは知る人ぞ知る絶景ポイントだった。

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