中国発の「金融危機リスク」が消えない理由 米中貿易摩擦の深刻化は避けられない

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1つ目は、共産党組織における上部の人に認められたいという欲求です。しかし、問題は共産党のモチベーションがまったく不明であることです。共産党といいながら、一部の人間が金儲け主義に走り、特権階級が生まれるなど不平等がまかり通っています。

2つ目は民族主義。中国はすべての世界の中心であるという中華思想ですが、これなどは、他の国々からすればまったく意味不明です。単なる脅威にしかなりません。

そして3つ目は資本主義。金儲けした人間が正しいという考え方です。共産党の国なのに、拝金主義がまかり通っています。

このように、相矛盾するモチベーション、グローバル社会に受け入れられない思想がごちゃ混ぜになり、今の中国人のモチベーションを形成しています。確かに表面上は、中国経済の未来は明るいように見えるのですが、このように根本が実に危ういだけに、はたしてどこまで成長が続くのか、正直言って疑問なのです。

過剰な投資が壊滅的なダメージを及ぼすおそれ

加えて、これまでの中国経済の成長は、大部分が投資に支えられてきました。たとえば中国の高速鉄道網は、2009年時点の営業総距離が1万kmを目標にしていたのですが、2016年には2万kmを突破し、2025年には約3万8000kmになるといわれています。

これを実現するのに多額の投資が行われ、中国経済は大きく成長してきたわけですが、問題は住宅投資と設備投資において、過剰感が出てきていることです。過剰な投資は不良債権化し、最終的には中国経済にとって、壊滅的なダメージを及ぼすおそれがあります。

では、その投資はどんな資金によって賄われているのでしょうか。中国の外貨準備に対して、実は、対外純資産の額はその半分ほどしかありません。つまり、半分は外国からの借金であり、それが活発な投資の原資になっています。

これも非常に危うい話です。外国からの投資は、非常に足の速い資金なので、もし中国国内で何か大きな問題が生じたら、一斉に逃げ出すでしょう。そうなったら、中国は一気に外貨不足に陥ります。

もちろん、中国の首脳は、それを百も承知だと思います。だから中国は今、さまざまな形で世界の覇権を握ろうとし、加えて産業の核となるものをすべて押さえようとしているのです。

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