残念な部下に「スイッチ」を入れる単純な方法 仕事ができないのは能力不足ではない

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この問題に最適な答えを与えてくれるのが「expectancy-value theory(期待価値理論)」です。この理論では、モチベーションのベースになるのは次の3つの要素だと説明しています。

1. 自身の能力に対する期待(効力)
 2. 環境に対する期待(結果)
 3. 目の前のタスクにどれだけの価値があるか(価値)

この3つの要素をそれぞれに検討してみることが、パフォーマンスに関するほとんどの問題と、その根本原因の特定に役立ちます。

仕事に価値を見いだせていない部下には

たとえば、パフォーマンスが思わしくない原因が、自信のなさ(自己効力感の低さ)にあると考えられる場合、つまり、自分は仕事ができないと思っている場合を考えてみます。この場合、自信のなさがどこから来ているのかを突き止めてみることです。そして、励ましの言葉をかけたり、ポジティブなフィードバックを与えたりして元気づけてみましょう。ただし、言い方を間違えると、かえって自信を喪失させてしまうので注意が必要です。

もし、スキルには自信があるのに、リスクを避けようとする(結果に対する期待値が低い)なら、それは自分には結果をコントロールする力がないと考えているためです。

このような社員には、一緒に最高と最悪の両極端のシナリオを一通りシミュレーションしてみて、不確実な状況にあってもどうすれば落ち着いていられるか考えてみます。そして、どうすればうまく乗り切れるかを話し合い、事前の計画や準備によって大半の結果はコントロールできることを納得させます。

もし能力があり前向きな姿勢も持っているのなら、仕事に「価値」を見いだせずにいるのかもしれません。仕事には価値がなければならないのです。

そうした部下には、プロジェクトやプレゼンがいかに組織全体の大きな目標と根本的に結び付いているか、あるいは部下の長期的なキャリアにどのようにつながっていくのかを明確に理解してもらうようにしましょう。こうした戦略のいずれも核心をついていない場合に初めて、スキルの問題をメインに取り上げ、トレーニングによって解決が図れるかどうかを検討すべきです。

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