ホームドア「取り付け」は難しいわけではない 設置までの計画や準備に長い時間が必要だが

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ホームドアの積み下ろしと取り付けが終わり、駅を出る回送電車。営業運転では停車時間を極力延ばさないことが重要になる(撮影:大澤誠)

だが、ホームドアを設置すると「5秒は停車時間が延びる」(東京メトロ)といい、停車時間を極力延ばさないための対策とは相反する面があるのは否めない。わずか5秒でも重なれば無視できない時間となり、その影響はダイヤにも及ぶ。たとえば銀座線では、ホームドアの設置で運転時間が延びると1編成で運転できる本数が減るため、新型車両は従来より2編成多く導入している。

東京メトロでも「停車時間への影響は議論になった」という。特に大開口タイプの場合、一般のタイプに比べて開閉にかかる時間はわずかながら延びる。だが、「ホームドアの設置は安全性を考えると必須であり、社会的要請でもある」。停車時間が延びる分はダイヤなどの運用面でカバーするとともに、ホームドア自体にも停車時間を極力延ばさないための対策が必要となった。

少しでも停車時間を短く

そこで今回、東京メトロとして初めて導入したのが、車両のドアの動きをホーム側のセンサーで検知し、それに合わせてホームドアを自動で動作させるシステムだ。

基本的に、ホームドアを使用している路線では、車両のドアとホームドアを連動させるための装置を車両と地上の両方に設置しているという。だが、運行するすべての車両を連動式に対応させるには相当の時間がかかる。一方、連動式ではなくホームドアの操作を車掌が手作業で行う方式だと、車両のドアとホームドアの両方を操作しなければならないため、時間のロスが発生し、停車時間が延びてしまう。

今回導入したシステムは、センサーが車両のドアの動きを認識してホームドアを動かすため、車両の改造は不要。車掌は車両のドアだけ操作すれば済むため、開閉にかかる時間を短縮できる。昨年から九段下駅の中野方面行きホームで行ってきた実証試験では、開く際のみが自動で、閉じる際は車掌のリモコン操作によっていたが、「センサーによってホームドアを自動で閉じるという仕組みが技術的に確立された」(井上さん)ことから、今回の採用に至ったという。

大開口ホームドアの実現と、センサーによる開閉の自動化を含むハード・ソフト面での停車時間対策にメドが立ったことで、東西線、さらには東京メトロ全線へのホームドア設置計画が固まったわけだ。

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