知られざる大動脈「神戸高速線」はどう変わる 阪急と市営地下鉄、直通実現なら何が起きる?

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さらに2005年9月、村上成彰氏率いる投資会社、通称「村上ファンド」が阪神株の約27%を取得していることを公表した。村上ファンドはその後も株を買い進め、翌年5月には約47%に達した。

これに対して阪神は当初、京阪電気鉄道に対して経営統合の話を持ちかけたが合意に至らず、長年のライバルだった阪急に相談を持ちかけた。2005年4月に持株会社化していた阪急ホールディングス(HD)は申し出を受け入れ、翌年5月末にTOBを決定。直後の6月初めに村上氏がニッポン放送株をめぐるインサイダー取引事件で逮捕されたこともあってTOBは成立し、10月に阪急阪神HDが誕生した。

阪急と阪神の経営統合により、阪急阪神HDは神戸高速株の20%以上を持つことになった。これを機に神戸市は神戸高速の経営安定化には阪急阪神HDによる運営が適当と判断し、2009年に15%を阪急阪神HDに売却。これにより阪急阪神HDが株式の過半数を所有することになった。

以前から山陽には阪神が、神鉄には阪急が出資していたから、神戸高速を含めた5つの鉄道はすべて阪急阪神HDとつながりを持ったことになる。

東西線・南北線の名が消える

現在の新開地駅の表示。阪神のスタイルとなっている(筆者撮影)

同じ2009年には阪神なんば線が開業し、近畿日本鉄道奈良線との相互直通運転を開始した。ただし、近鉄車両の乗り入れは三宮までとなった。近鉄の車両は全長20m級、阪神は18m級と車両規格が異なることが大きい。阪急に続いてここでも編成の長さが影響したようだ。

東西線・南北線という呼び名が変わったのは翌2010年のことだ。三宮-新開地間は阪急神戸高速線、元町-西代間は阪神神戸高速線、(高速神戸-新開地間は重複区間)、新開地-湊川間は神鉄神戸高速線となった。駅の看板も西元町-高速長田間の各駅は阪神、阪急三宮-高速神戸間にある花隈駅は阪急のスタイルに変わり、両社が駅運営も担当することになった。

一連の動きの裏には神戸市営地下鉄の存在があると考えられる。1977年に最初の区間が開業した市営地下鉄西神・山手線は、神戸市中心部では長田、湊川公園、三宮を東西に貫き、神戸高速東西線と並行して走っている。神戸市としては地下鉄の運営に力を注ぎたいと思っていた矢先に阪急と阪神の経営統合劇があり、神戸高速については鉄道運営経験の豊富な阪急阪神HDに任せようという気になったのではないだろうか。

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