文章のヘタすぎる人が知らない「悪文」の正体 わかりにくさや違和感にはすべて理由がある

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こういった主語と述語のねじれは、会話においては頻繁に起こる。だがねじれたままの文を書き記すと、仮に意味が通じたとしても、幼稚な書き手だと受け取られる。多くの言語において、話し言葉と書き言葉は同じではない。

話し言葉は基本的に、その言語に囲まれて育てば誰でも使えるが、書き言葉は一定の教育を受け、実践を重ねて初めてきちんと書けるもの。起こりがちな間違いだからこそ、「教養がない」「知性に欠ける」と思われないために、注意したいポイントだ。

(4)の文は、1文に2種類の事柄についての情報が入っている「一文二意」であることが問題だ。1文にひとつの事柄だけを書く「一文一意」が望ましい。二意でも必ずしも文法的に間違っているわけでもなく、意味が通じることもある。だが、よりわかりやすい文を目指すには、二意は避けたほうがよく、三意、四意はもってのほか。「〜で」「〜しており」といった言葉を文章に多用する人は、この問題をはらみやすいので要注意だ。

この文章の場合は、「長期契約である」ことと、「平均価格を基準とした契約が多い」ことという2つの事柄に分けて、2文で構成するのが正解だ。

(理想例)日本の原油輸入は8割以上が長期契約。長期ドバイ原油の平均価格を基準とした契約が多い。

文には相当程度の正解がある

このように、「わかりにくい言葉」「違和感がある言葉」にはすべて理由がある。長年、国語は感性で学ぶ教科であり、答えが明確ではないとみられてきた。だが少なくとも、文には相当程度、正解があるのだ。このルールを多くの人が軽視しているからこそ、気づいて学び直した人には武器になる。秋から何かを学ぼうか、という意欲を持っている人はぜひ、国語もその選択肢に入れてほしい。

『週刊東洋経済』10月2日発売号(10月7日号)の特集は「学び直し 国語力 ビジネスに効く!『書き方』『話し方』です。
杉本 りうこ フリージャーナリスト

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すぎもと りうこ / Ryuko Sugimoto

兵庫県神戸市出身。北海道新聞社記者を経て中国に留学。その後、東洋経済新報社、ダイヤモンド社、NewsPicksを経て2023年12月に独立。

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