凱旋門賞の「呪縛」を日本競馬が打破する方法 サトノダイヤモンド15着惨敗から見えたもの

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日本馬の海外GⅠでの勝利は通算35勝を数える。欧州ではタイキシャトルがマイル(1600メートル)、アグネスワールドやシーキングザパールがスプリントのGⅠを制した。香港やドバイでは、それより長い、中長距離のレースでも結果を出してGⅠを勝っている。オーストラリア最大のレースのメルボルンカップも勝ったことがある。

2014年にはジャスタウェイがドバイデューティフリー(現ドバイターフ)を圧勝したパフォーマンスが評価されてワールドレースホースランキングで年間1位となった。昨年もエイシンヒカリがフランスのイスパーン賞を圧勝し一時は首位を快走した。日本馬が海外の主要GⅠに出走することは珍しくなくなった。

個人的には日本馬が英国伝統のロイヤルアスコット開催のGⅠを制してエリザベス女王から表彰される姿を見てみたいと思う。アメリカのブリーダーズカップにも積極的に挑んでほしい。実は今年から大阪杯の勝ち馬に愛チャンピオンステークス、安田記念の勝ち馬にはフランスのジャックルマロワ賞、宝塚記念の勝ち馬には米・ブリーダーズカップターフの出走権が与えられたが、挑戦する馬はいなかった。

先述したように、凱旋門賞は欧州調教馬以外が勝ったことはない。日本では「世界最高峰のレース」と半ば神格化されてしまったが、見方を変えると、「欧州中長距離最強馬決定戦」に日本馬だけがこだわり続けて挑んできた現状だともいえる。

凱旋門賞の「呪縛」を解くために

ただ、ここまで来たら、勝たなければ「凱旋門賞の呪縛」から逃れられない。どうしたら凱旋門賞を勝てるのか。それは日本競馬を取り巻く人々全体が熱意を持って考えるしかない。勝利を可能にするだけの経験を積み重ねてきてもいる。

今回は結果が出なかったが、池江泰寿調教師は「今ならオルフェーヴルを勝たせることができた」と常々語っている。敗戦を糧に学ぶことは多い。そして、それを結果につなげてほしい。池江師は「悔しくて仕方ないが、懲りずにまた挑戦したい」と語った。挑戦しなければ結果は出ない。同時にもっと門戸を広げて世界のビッグレースに挑んでほしい。

現状では日本馬が出走しなければファンはチャンピオンステークスの馬券を買えない。しかし、海外で日本馬が活躍すれば、日本でファンはそのレースの馬券を買って楽しめるという時代が来たことは確かだ。強くなった日本馬には大きな可能性がある。グリーンチャンネル(競馬や農林水産業の専門チャンネル)の凱旋門賞中継にゲスト出演していた武豊騎手は、エネイブルの歴史的強さを見てこう語った。「こういう馬を日本からも出さなければならない」と。その日を心待ちにしている。

高橋 利明 福島民報 記者

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たかはし としあき / Toshiaki Takahashi

1965年生まれ。子どもの頃から地元の福島競馬場に通う。1989年に成蹊大学卒業。入社2年目の1990年に念願の福島民報社競馬担当記者へ。1993年から本紙予想を担当。福島テレビ、ラジオ福島の競馬中継にも出演。永遠のアイドルホースはハイセイコー。競馬の現場記者であり続けることが目標。
 

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